「魔女がいっぱい」
"BRATS!"という悪い言葉覚えちまいましたよ。アン・ハサウエイがもともとデカい口をさらに耳まで裂けさせてロシア訛りの大声で何度も叫ぶもんだから。
この映画はほぼそれに尽きるのですが、ちょっと風変わりなところもあります。
子供たちが魔法の薬でネズミに変えられてしまい、その仕返しに薬を盗み出して魔女たちの食事に混ぜて食べさせることで同じ目に合わせる、という寓話にありがちなお話ではあるのですが・・
面白いことに、子供たちはネズミのままの姿でその後も楽しく過ごしましためでたしめでたしになっています。「レミーのおいしいレストラン」みたいですね。
一般向けのお話としては、何らかの形で子供たちは元の姿に戻って、それから幸せに暮らしましたとさ、というのが普通だと思うのですが、そうすると、同じくネズミに変えられた魔女たちも、元に戻る方法があることになってしまい、どうにも収まりが悪いです。
この種のお話を見るたびに、そのことが気になっていたのですが、この作品は、子供たちがネズミとして生きることに楽しさを見出して満足するということで、不安な未来を回避しています。
割り切ってますね。
それだけではありません。本作は更に、主人公の少年(今ではネズミです)を、世界中の魔女たちを一人残らずネズミに変える革命の闘志のように仕立てています。ネズミの短い寿命にまで言及して、死ぬまでにきっとそれをやり遂げるような話で締めくくっているのです。
こうまでされると、そこに暗喩を読み取りたくなってしまいます。いまのような格差拡大の世相の元では、いささか剣呑にも思えます。
ということで、他愛もないお話の中に、魔女のような毒を含ませた、面白い作品に見えました。