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December 2020

2020.12.31

「私をくいとめて」

原作小説は2017年発売。作者は綿谷りさ。

変な感覚だけど、この作品を見てコロナの前がどうだったか、思い出した。何が違うかというと、なんだかんだ言いながら世の中はまだロマンに浸る余裕があったということだ。

今は下手をすると命に係わるので、どうしても他人との交流は控えめにならざるを得ない。嫌な世の中ですね。

自分はあまり気にしないといっても、他人は気にするので、どうしようもない。夏の盆休みなんか、スタッフたちに懇親会の開催を打診したら、年配の一人を除いて学生達は全員、コロナが怖いのでと断りを入れてきた。まあコロナは口実かもしれないのだが。orz

とまれ、そういうご時世だから、なんだかこの作品は遠い世界の話のようだ。なにもかも狂ってしまっているのが、こんなに意識されたのは初めて。その意味で、見てよかったです。

*  *  *

お話の中身は、アラサー女子の生き方アラカルトみたいで、男の観客である私には退屈になりそうなところ、能年玲奈のおかげでなんとか持ちこたえたという感じ。どたばた女を演じるのはうまいと思う。作中では、美形にも拘わらずお笑いとズッコケのオーラを身に纏っていて、これがたとえばワンダー・ウーマンとかミス・マーベルとか真面目一辺倒のキャラを演じたらきっとぶち壊しになるだろうとか余計なことを想像しながら見ましたすみません。

具体的に言うとたとえば、最初の方でコロッケ屋の前から自転車で立ち去ろうとするときの斜め後ろから映した姿。漕ぎ始めの猫背とか足の開き具合とか肘の突っ張り方とか、完璧です。漫画でズッコケギャグとして描かれる瞬間そのまんま。天然かもしれないが演技だとしたら超一流でしょう。疑いありません。

その割にファッションが洗練され過ぎていて、築地という設定からは完全に浮いていました。もちろん意図的にやっているだろうけど、作品の本旨とはずれている気がします。

築地といえば、築地市場の跡地が更地になっていて、朝日新聞本社が丸見えになっているのは面白い風景でした。

ヒューマントラスト渋谷のロケ映像とかも、まさにそこのスクリーンで見ている側としては一気に親しみが湧いてよかったです。

ところで、本作では思わぬ発見がありました。それは片桐はいり。私はこの役者さんはあまり評価していなかったのだけど、本作のバリキャリウーマンはがっちり嵌ってましたね。意外でした。いままではあまり合わない役をやらされていただけかもしれません。

*  *  *

本来ならマーベルとかの金のかかった出来合い超大作で盛り上がるはずの年末ですが、今年はコロナのお蔭で、ちょっと毛色の変わった作品で締めくくることになりました。来年はこの禍を克服してよい年になりますように。のんの女優としての未来にも陽が差すことを祈りつつ。。。

 

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2020.12.28

2020年のマイ・ベスト

Game of thrones の正月一気見を皮切りに、オンライン配信が自分的に幕を開けた年でした。なので、同作は番外としておきます。

振り返ってみると、コロナ禍で映画館が長らく休業していたこともあって、NETFLIX配信がかなりの割合です。
もっとも、配信作品が映画館で先行上映されるのを見に行くというケースもちらほらあり、TVシリーズの一気見も含めると、映画館も配信もという贅沢なスタイルが定着する予感があります。

■マイ・ベスト
「クイーンズ・ギャンビット」
「ザ・ハント」
「ウルフウォーカー」
「ミッドナイト・スカイ」
「異端の鳥」
「ラストレター」
「アンという名の少女」
「ジョジョ・ラビット」
「ANNA/アナ」
「海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版」

■次点
「パラサイト 半地下の家族」
「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」
「一度も撃ってません」
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」
「イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路」
「アイ・アム・マザー」
「アンティークの祝祭」
「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」
「嘘八百 京町ロワイヤル」

■番外
「Game of thrones」

 

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2020.12.27

「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」

NETFLIX配信 全22話

初めの頃のどろどろした複雑なお話の面白さと違って、かなり単純化されてきています。単なる力比べが多くて、ZEROあたりと比べてむしろ後退している感じ。RPG的な組み立てとか、少しあざとい感じもしますが、まあひとつの手法ではあるのでしょう。

力比べそのものは力が入っています。敵キャラに創生神まで出てしまっては、さすがにこれで最後かと思ったら、もう1作あるようですね。最後のボスキャラがまだ残っている。

創生神登場からのインフレが、一体何段階やるのかという際限の無さで心臓に悪い。こういうところを徹底的に引っ張れるのが配信の利点だということはわかります。尺に制限のある映画作品だったら2段階くらいのインフレが限界でしょう。

次の最終作ではこれを上回ることをやるということなんでしょうかね。もう少し捻りがあっても良さそうですが・・

その他、いろいろ登場する女神キャラは完全にさーびすさーびすぅの類でしょうか。

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2020.12.20

「ワンダーウーマン 1984」

ガル・ガドットさん久しぶり~。でもこの人が演じられる役柄は限定されている感じがした。弱さを見せる場面はさほど上手くない。あくまでも強く、恰好よく、がこの人の持ち味。

冒頭のエピソードが一番ファンタスティックでよかったが、あとは映像はいいけれど、お話の組み立てが少し雑な感じ。


ただ、今回の敵が、悪役個人の野望ではなく、人々の願望そのものだというコンセプトは興味深い。

人は様々な願望を気軽に持つことができるし、それを正当化する理屈を捻りだすけれど、願望の対価を考えることはほぼない。望みがもし本当に叶ったら、あなたとあなたの周囲は本当に幸せですか、という難しい問いを、この作品は投げかけてくる。

本作では結局、ヒーローもディランも要人も大衆も、それぞれの願望を取り下げることで事態が収拾されるのだけれど、さてそれでは、人は望みを持つべきではないのか。見ているこちらは、その疑問に行き当って立ち往生する。

たいへんだ。

落ち着いて考えてみると、ここでも程度問題という解がありそうだ。死んだ者を生き返らせたりする究極の願望は、持つのは構わないが実現はしない方がたぶんいいのだろう。百万円が欲しいといった願望は、誰かから不法に奪うのでなければ、努力の目標としてはまあいいのではないか。その中間くらい、例えば生活習慣の違う異民族や異教徒とはできれば棲み分けたいという願望はどうだろう。ある種の政策として時間を掛けて対話を重ねながら実施するなら、必ずしもだめということでもないだろう。議論のあるところだ。

映画の中ではそうした願望がたくさん口にされるのだけれど、よく吟味せずに一緒くたにされて、人々が願望を持つこと自体が世を乱すかのような扱いになってしまっている。話が雑だというのは、そのことだ。

それにしても。と、また蒸し返すように考えてしまう。

生まれたときから恵まれた境遇の中で努力を重ねることができたダイアナと、スタートは平凡だがやはり努力して博士にまでなったものの、相変わらず野暮で冴えないバーバラとの葛藤は、どう考えたらいいのだろう。

ダイアナのようになりたい、というバーバラの願いを、簡単に否定できるのだろうか。その願いは、死者を蘇らせたいという大それた願望と同列に見て否定してしまっていいのだろうか。事実として、生まれたときから差があることを否定はできないけれど、それを、ただ真実があるだけ、と言い切ってしまう恵まれた側の言葉には、簡単に同意はできない罠を感じてしまう。

作りが雑なだけに、かえっていろいろ考える余地が生まれている、そういう作品に見えました。

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2020.12.13

「ミッドナイト・スカイ」

NETFLIX映画を映画館で見ました。

人類の滅亡と開闢(かいびゃく)とが、宇宙空間を隔てて同時に進行する、不思議な静けさに満ちた味わいの映画。

もし居住可能な地球外天体が見つかれば、こうしたことは起こり得ない話ではないし、それを描いた作品もいくつかあったと思うけれど、多くは脱出劇を伴ったスペクタクルとして劇的に描かれてきたように思う。

しかしこの作品は、そういうものとは一線を画している。
生を求めての脱出ではない。地上に残された人にも未来はない。

反対に、人生の終着を求めて、死の星に変わってしまった地球への帰還がある。

静謐な空気の中でお話は進行する。こういう作品は少し珍しい。


この種の作品に暗喩を見てしまうのは、自分の悪い癖だと思いつつも、ここには例えば、旧来型の映画産業と新興のネット配信産業の地位の交代を読み取ってしまうこともできるかもしれない。

ジョージ・クルーニーは旧世界の人間。これまで彼が愛してきた世界は終わりを迎えている。新しい世界が発見され、新しい世代がそこへ向かうための航路を彼は命を懸けて示す。新しい世代を支えてきた人々の中にも、旧世界へ戻って最後を迎えたい人がいる。一方で、旧世界に取り残された中にまだ幼い子も居て涙を誘う。
よくできたお話ではないですか。

悪くない味わいでした。
ちなみに、もちろん配信で見ることもできるけれど、こういう静謐は映画館の気積の大きさが物を言うところです。クルーニー、さすがによくわかってますね。

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2020.12.12

「BEM」

NETFLIX配信 全12話
もとはTVシリーズだったのかな・・

懐かしい妖怪人間ベムのリメイク。昔のがどういうお話だったか、もうすっかり忘れたけれど、本作についていえば、人間になりたい妖怪のベム達が、人間に関わり観察する中で、人の本質に迫ろうというコンセプトは変わらないようだ。

なので、一作づつのタイトルがそのまま人の暗部を表していて、お話の内容も極めて模式的で分かりやすい。

はじめの3話は各キャラクタの紹介で、現代風の仮の姿の下に、それぞれ異なる典型的な3人の内面が吐露されたりする。

中でもベラとベロの会話で、
「ベラは人間に夢見過ぎ」
「ベロは人間に闇見過ぎ」
といった応酬があったりして、この作品の骨子を表している。ベムはバランスの取れた調停役かつ人の世の為に働くという絶対の推進力になっているという構図。表現としては「ど」が付くストレートさで、たいへんわかりやすい。

その後は、徐々に町の統治機構の謎に迫ることで、ベム達と同じ強力な妖怪人間「マダム」との遭遇に繋がっていく。

どちらも不死の身であり、死を渇望しているのだが、ベム達が人間になることでそれを達成しようとするのに対して、マダムの方は、妖怪人間のままでそれを成そうとする。結果として街ひとつを巻き添えにすることになるその方法を、ベム達は阻止するために対決する、という構図。

いいんじゃないでしょうかね。
昔との違いといえば、ベラやベロの本当の姿を「カッコいい」と感じる小数の人間を置いて、多様なものの見方を打ち出し、3人の立場に希望を与えたりしているところか。それなら人間にならなくても今のままでもいいんじゃないの、という微妙な時代の感覚を映しているかのようです。

はじめから終わりまで、単純にわかりやすく出来ていて、楽しめました。

 

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2020.12.06

「魔女がいっぱい」

"BRATS!"という悪い言葉覚えちまいましたよ。アン・ハサウエイがもともとデカい口をさらに耳まで裂けさせてロシア訛りの大声で何度も叫ぶもんだから。

この映画はほぼそれに尽きるのですが、ちょっと風変わりなところもあります。

子供たちが魔法の薬でネズミに変えられてしまい、その仕返しに薬を盗み出して魔女たちの食事に混ぜて食べさせることで同じ目に合わせる、という寓話にありがちなお話ではあるのですが・・

面白いことに、子供たちはネズミのままの姿でその後も楽しく過ごしましためでたしめでたしになっています。「レミーのおいしいレストラン」みたいですね。

一般向けのお話としては、何らかの形で子供たちは元の姿に戻って、それから幸せに暮らしましたとさ、というのが普通だと思うのですが、そうすると、同じくネズミに変えられた魔女たちも、元に戻る方法があることになってしまい、どうにも収まりが悪いです。

この種のお話を見るたびに、そのことが気になっていたのですが、この作品は、子供たちがネズミとして生きることに楽しさを見出して満足するということで、不安な未来を回避しています。

割り切ってますね。

それだけではありません。本作は更に、主人公の少年(今ではネズミです)を、世界中の魔女たちを一人残らずネズミに変える革命の闘志のように仕立てています。ネズミの短い寿命にまで言及して、死ぬまでにきっとそれをやり遂げるような話で締めくくっているのです。

こうまでされると、そこに暗喩を読み取りたくなってしまいます。いまのような格差拡大の世相の元では、いささか剣呑にも思えます。

ということで、他愛もないお話の中に、魔女のような毒を含ませた、面白い作品に見えました。

 

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