「クイーンズ・ギャンビット」
NETFLIX配信。全7話。
これだよこれ。アニャ・テイラー=ジョイの役は。
というくらい、彼女の魅力を遺憾なく引き出す設定とストーリーで、言うことありません。満足しました。少しづつ見る予定が、気が付くともう止まらず一気見です。
このくらいの長さのドラマなら、途中弛緩せずに流れを作ることができるという見本でもあります。ちょうどいいタイミングで次のトピックが起きてお話が盛り上がります。
少女の不幸な過去にはあまり大きな尺は割かずに、むしろ、この稀代のチェスプレイヤーが破竹の勢いで勝ち上がっていく様をドラマチックに描いているのがよいです。かといって、能天気なお話でもなく、母が残した負の遺産に人知れず苦しむところもきちんと描かれて、かつ、怒涛の進撃や挫折と有機的に表裏を成しているのが、よい味わいです。
一時は破滅さえ予感させる流れもあってはらはらさせるのもニクいし、それを乗り越えて、ソビエトのチャンピオンチームとの対局の中で、温かい賞賛を送られるクライマックスも泣けるし、全てが終わって緊張がほぐれた帰国の途で、共産圏の街の人々と、一局対戦する終わり方など、心底チェスが好きなんだなあこの人たちはということがよく伝わってきて、頬が緩みます。
チェスでは人間はAIに勝てなくなりましたが、人と人との飾らない、嘘のない、気持ちの良い真剣勝負を介した交流には、相変わらずこうしたものが必要なのかもしれないという余韻を残してくれました。良作。