「エマ、愛の罠」
愛の罠とか極めて不道徳とか煽り文句が流れているけど、まあその点はそれなり。ダンサー達のストリートでのパフォーマンスや、火炎放射器を使ったストレス解消や、お約束の乱交パーティなど、かなりアナーキーな感じが漂ってくるけれど、その隠された目的が、子供と家族に対する真摯な希求である点が、単なる不良映画とは違うところ。
作り手が意図しているかどうかわからないが、この作品は、行くところまで行った核家族化の崩壊と、それに代わる新たな家族像を示していると言えなくもない。子供を安心して育てるには、ふた親だけでは十分ではなく、多くの大人に囲まれて、一緒に育つ子供たちが必要だということを見せている。そして、血のつながりは必ずしも重要ではない。
映画、特にハリウッド映画ではよく、仲間たちのことを「ファミリー」と言うことがあって、その割に家族としての日常が描けていない口先だけのものが多い。けれどもこの映画の女ダンサー達の絆は、じっくりたっぷり描かれていて、本物を感じさせる。彼女たちなら、確かに、子供を立派に育てられそう。
そのあたりを描けているところに、本作の値打ちがあると思います。
それにしても、この主演女優さんの不貞不遜な眼力は何でしょうね。それだけでもぐいぐい引っ張られます。
堅苦しい規則の中で毎日を生きて、何かが死にかけているなら、ちょっと見て勇気をもらえかもしれない、そういう感じの一本でした。