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2020.08.23

「海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版」

自然な色調で蘇った名作。言うまでもなく傑作。
ちりばめられたエピソードはそれぞれ表情豊かな曲で彩られて、この男の恬淡とした振る舞いとよく調和している。

宣伝文句では船で出会った少女に恋したエピソードがクローズアップされているが、もちろんそれがテーマでもない。

なぜなら、彼は船を降りる決心はしたものの、結局引き返して一生を船の上で過ごしたのだから。

なぜか?
それが映画の最後に語られる。この作品の眼目になる。

限りあるからこそ無限。

作中で何度か、彼の親友が現世的な成功に彼を誘おうとするたびに感じた違和感は、これが理由だった。

そんな風に茫漠とした成功という名の何かよりも、限られた船の上を行き交う限られた人々と楽曲を通じて共有する時間の方が、彼にとってはずっと大切だったのだ。

ジュゼッペ・トルナトーレの作品づくりそのもののような主人公の生き様でした。

映画ってほんといいですね。

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