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2020.08.30

「イップ・マン 完結」

とうとう完結です。相変わらずその物静かに燃える炎のかっこよさに痺れます。ドニー・イェンのイップ・マンはいつ見てもよいですな。

中国でこれが公開されたのが2019年12月。折しも米中対立がエスカレートしていく直前の、なんともタイムリーなストーリー展開。
白人による理不尽な抑圧に我らが葉問が敢然と立ち向かいます。

彼の依って立つところは、不公正を許すことはできないという武道家の精神。そこは劇中の台詞のとおりです。

願わくは中国の人々が、この映画が示す公正さを自分達の在り方に照らして恥じないかどうかに思い至らんことを。

といっても、ここ数世紀の歴史を顧みれば、彼らの憤りは理解できるのが悩ましいところ。世の中そう単純でもない。我々も傍観者ではなかったわけですし。

本作で敵役になっている米海兵隊でも、卑劣な連中は下っ端の一部で、上の方も、大多数の兵隊たちも、合理的で公正な理解を示しているのが救いといえばそうです。

現実もこんな風にうまく納まるといいのですが、映画の中の葉問師匠が結局、故郷へ帰って、息子に自分の得たものを教えるあたりに、今後の中国の行く道が暗示されています。どうなるのでしょうかね。

ところで、実際の葉問さんは、Wikipediaを見るとたいへんな苦労人のようで、かつお茶目な人だったようです。映画で描かれている像とは少し違うらしいことは、記憶しておきたい。

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