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July 2020

2020.07.26

「オールド・ガード」

NETFLIXオリジナル

まあちょっとTVドラマっぽいつくりかな。

シャーリーズ・セロン様をこういう所にはめ込むと、浮いてしまう感じ。映像的にわざとそうしている気もするけど、わざとらしすぎる。

お話はまあ、ありそうなものだけれど、ひとつ目新しい点があって。
不死者の苦しみを、メンタルな面だけで言わずに、具体的に水底の棺という仕掛けで、永劫に繰り返される物理的な苦痛として描き出して、その苦痛故の心の崩壊という形で説明してました。うまいアイデアですね。

エピローグで、そこから生還した人をサプライズ登場させたりしたら、これはもう次は骨肉の争いかなと思ってしまうではないですか。もちろん、永遠の孤独を癒すハッピーエンドと受け止めることもできるけれど。

セロン様、アトミック・ブロンドのときもそうだったけど、アクションはあんまり上手くないんだよなあ。繰り言になるけど、そういう使い方は少し違うと思いました。

 

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「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

いい映画だなあ。そしていつも通りのウッディ・アレンだ。

本作はロマンティック・コメディの衣を纏っていて、その面で上質であるのはもちろんだけれど、それ以上に、いわゆる文化資本というものについて、作り手の考えをとてもよく表しているように思う。その考えに共感を抱く人にとっては、とてもいい映画なのだ。

我々都市の住人は、貧富の程度の差こそあれ、厚い文化の層の中で育まれ大人になっていく。田舎に憧れを抱きはするものの、その文化資本を捨てることはできない。否応なくそこへ還っていく。

もちろん、自らの出自はそうではないことを忘れることはない。だから憧れを抱いたり、一時はそこへ自分を埋め込もうとしたりもするけれど、最後は決してそうはならないのだ。

見方によっては麻薬的であるかもしれない。でもそれは、輝く太陽と厚い曇り空のどちらに馴染むかという違いに過ぎないのだから、引け目を感じることはない。

来し方を忘れず、しかし行く末を誤らず、そうして我々は今日も雨の石の街で生きていく。

そうした雰囲気がよく出ていて、改めていい映画だなあ、ウッディ・アレン上手いなあと思うのでした。

配役がまた絶妙。エル・ファニングとティモシー・シャラメは言うに及ばずだけど、お、こいつジュード・ロウかな?そうだよな?というところで笑ってしまったりします。またまた好きになりましたよジュード・ロウ。はまり過ぎてるでしょw

 

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2020.07.12

「アンチグラビティ」

原題は「COMA」。昏睡という意味だけど、別に「コーマ」という昔の映画があるので、それとのコンフリクトを避けた邦題だろうか。
この邦題の方がネタバレなく見られたのでよかった。実際、重力が混乱している異様な世界での逃走劇から物語が始まり、その世界の種明かしは中盤まで持ち越される。そのおかげで奇妙な世界の描写がリアリティを持つ効果があった。

重力の異常は初めの方だけで、あとは普通に夢幻的な映像が続くだけだけれど、それでも空中に浮かぶ島とそれらを繋ぐ回廊で構成された世界は十分魅力的。潜水艦や飛行機もあり得ない配置の仕方で空間の面白さを盛り上げている。

主人公は売れない建築家だけれど、映画の空間も建築的に面白くできていて、割と好みで在りました。

お話も映像も、ロシアのセンスっていいかも。

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2020.07.08

「シスター戦士」シーズン1(10話)

NETFLIXオリジナル

もうね。見てくださいよこの日本語タイトル。
もうね。病気ですね。病気のティーン向けです。

第1話のタイトルが「詩編46編5節」ですよ。
第7話なんか「エフェソの信徒への手紙4章22-24節」
とかもう全然わかりません。きっと深~い意味があるんでしょう。知らんけど。
そんで仰天の裏切り展開が待つシーズン1最終話は「ヨハネの黙示録2章10節」。
まあそれは聞いたことあるかな。でもやっぱりわからん。

英語タイトルは「Warrior Nun」なので、まあそれなり。
でも内容は日本語タイトルの方がよく表しています。
簡単に言うと、「悪と戦うシスターの秘密結社を描くファンタジードラマ。」(wikipedia)
なんで男の僧兵じゃなくて女ばかりのシスターなのか。
病気です。
セーラームーンが美少女戦士ばかりなのと同じです。たぶん。

んで、このシスターたちの戦装束がもうニンジャなのね。
武器も忍者刀に手裏剣にクナイ。まあショットガンを2丁拳銃みたいに振り回してる変わり者もいるけど。
もうね。キてます。

お話の方はというと、展開が遅くていらつきます。テレビドラマだからまあ仕方がない。
ただ、それなりに組み立てられていて、掴みの第1話はなんかいいし、その惰性でずっと見てしまうようなところはあります。バチカンの権力闘争とか悪魔の顕現とか天使の輪みたいのとか秘密結社とか、宗教っぽい小道具がいろいろあって、その辺も少し見続けてしまう要素かも。

ま、お勧めはしません。10話分の時間をつぎ込んでしまったので、ここに告解するものです。

 

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2020.07.06

「一度も撃ってません」

昭和の追憶なのかもしれないけれど、味があるいい映画。かっこよくてかっこわるい大人が出てくる。ポリコレで塗り固められたいまどきの若者にも観てもらいたい。

この作品が示している世界より、私は少し後の世代だが、その熱とか楽しげな狂気とか先の見通せない不安と愉悦とかはなんとなく覚えている。特に憧れはなかったけれど、あれはあれで一つの画期だったなとは思ったりしている。高度成長期っていうやつが爛熟期に入ってからの光と影。

いろいろな記憶の断片が出てくる。
タバコにトレンチコート、ブラックハットとは公式サイトに書いてある小道具だけれど、狭くて薄暗いバーとか一歩出ると小便臭さが匂ってくるような繁華街とか、売れない作家の昼と夜の顔とか、そして極めつけは、一度も撃ったことがない伝説の殺し屋とか。ここは、専守防衛ですかと笑うところなのかもしれないが、そういうものに愛おしさを覚える感性が、あの頃にはあった。アメリカの傘の下で見た一場の夢だったかもしれないけれど。

ところで、この映画、他の部分と少しタッチの違う気合の入った部分がある。
男二人と女一人、バーを出てレンガ造りのガード脇で別れるところ。まず映像の質が一段階上がったような手触りと構図。仄暗く妖しい夜の光の中でレンガのアーチが右半分覆いつくして、ここは一体日本なのかと目を疑うような非日常感。
そこへ左から、女がふらりと画面に侵入して中央まで行かずにまたさっと左へ逃げていく。「さよなら」という台詞と一緒に。桃井かおりに真価を遺憾なく発揮させて、楽しく儚い夜の終わりを告げている。

後で、お話が大団円を迎えて、今度は男が妻を、同じ場所でタクシーに乗せ家に送る場面がある。ここでは、レンガのアーチの向かい側の雑然とした街も画角に入れて、何の変哲もない日常として見せている。この落差が上手い。

「もののけ姫」でも、森の主が治める昏い森と、文明の力が及んで憑き物が落ちたような明るい森との落差が良かったけれど、それと同質のものを実写でやっている。

そういうものを見られて、とても満足です。昭和へのレクイエムなんでしょうかね。総じて高齢の登場人物の意気を見ていると、まだ暫くは死なない感じもしますけれど。

 

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