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2020.06.14

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

たぶん、長く名作として残るのではないか。

4人姉妹の生き生きとした日常を、その娘時代の屈託なさと成長してからの気苦労を、喜びも悲しみも一切合切ひっくるめて、真正面から描いている。逃げず、茶化さず、皮肉らず、斜に構えず、謳い上げている。たぶん男の監督にはこれはできない。どこかに意地や見栄が残るからだ。

でもこの監督さんは、それをやってのけている。
傑作です。

物語と絵柄と台詞と役者とが凄くマッチしていて、涙が出るほど素晴らしい。あっ・・と感じさせる印象深い一瞬がいくつもあって、とりわけ、病状が悪化した三女と、見舞いのため帰省した次女が、懐かしい思い出のつまった海岸に座って、次女が物語を語って聞かせるシーン。その神々しさといったら、近年稀に見る芸術です。一幅の名画です。しかも背景と光を微妙に変化させ、人物の心情の移ろいに合わせて、このあとの展開までも暗示して見せているのですから。映画というものをこれほどまでに芸術として作れるのかと、改めて蒙を啓かされます。

構成と演出のすばらしさ、語り口の巧みさはもちろん、役者達も素晴らしい。大女優の道を歩み始めているシアーシャ・ローナンは言うまでもありませんが、ほかの3人もそれぞれの役柄を引き立てています。特に四女を演じたフローレンス・ビューは、少女時代と成長してからの女性とをくっきりと演じ分けて、ほかの3人とはその点で鋭い落差を見せつけています。脇役たちのベテランらしい手堅さも、この作品を支えています。

どこからどう見ても間違いなく、必見の一本。

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