「アイ・アム・マザー」
「アイ・アム・マザー」
https://www.netflix.com/title/80227090
NETFLIXオリジナル。SFスリラー。
閉ざされた人工的な環境の中で人々が暮らしている。外界に出られないのには理由がある。ところがある日、何かの偶然でその理由が崩れ、物語が動き出す。そういうシチュエーションの作品は結構多い。動き出した先に何を置くか、そのために前段に何を置いておくかで、それぞれの味わいが出る。
本作は、何だろう。母という存在を置いているのは間違いないのだが、普通にイメージされる、惜しみなく与える愛などというものとはたぶん違う。母性・・とも違う。なにしろ「それ」は機械なのだから。
それには目的があり、そこに向かって周到に、何重にもプログラムされている。母性というより理性から作られているのだ。驚くことに、それは母性を演技する。もっと言えば、深い洞察に満ちた行動を取る。子供に悟らせずに汚れ仕事も実行するし嘘もつく。それが子のためだと命じる理性の声に従って。
親の心子知らず。
そういうことを、見終わった最後に思い出すような、味わいのある作品でした。
赤子の弟を抱いた彼女もまた、やがて彼女の育ての母のことを理解するようになるのでしょう。
そこに、プログラムされた機械と生身の人間の違いはないように見えました。
機械が残した親心を、生身の人間である彼女が受け継いだかのような表情で終わっているのが、とてもいいです。
この後も機械たちは彼女とその家族を見守っていくのでしょうけれど。
機械はここでは神。新たな造物主というわけです。
まあ、さらに言えば、その機械をプログラムした人間が、もうこの世にはいない人間が、いたわけですけれど。