「アナイアレイション」
NETFLIXオリジナル作品。
梵我一如というのは、宇宙原理と個体原理が同一であるとする思想だそうだけれど、この映画はまさにそれ。タイトルの"anaialation"の訳としては「消滅」とか「全滅」が出てくるけれど、おしまいの方に「霊魂消滅」という訳もある。それを物語と映像にしてみるとこんな感じだろうか。
霊魂が消滅するのだから、それは我という個体にとってはいささ恐怖でもあるかもしれないので、一見ホラー風に見えるのだろう。けれども、この作品はもう少しいろいろな味付けがある。
消滅に対する登場人物たちの向き合い方は様々だ。拒否あり、受容あり、観察あり、自己破壊(自殺とは違うとされる)あり。クルー全員が結局anaialateされる中で、主人公のスタンスは中立の周辺を揺れ動いている。観察し、一部受容し、戦い、そして個として生還する。と思った最後に、本当にそうだったろうか、梵を甘く見ていなかったか、と思わせて映画は終わる。
ゆっくりしたペースを最後まで崩さない中に、多少エキサイティングとかセンセーショナルとかを感じる場面もあるものの、全体に尖った要素を押さえている。そのことが、女性的というか、独特の波動を生み出していて、思わず最後まで引き込まれました。
なんだか煮え切らない、中途半端な感じにも見えるけれど、作品全体のゆったりした波動を受け止められれば、それなりにいい作品と言えそうです。ワタクシ的にはそう思えました。