« 「アイ・アム・マザー」 | Main | 「The KING」 »

2020.04.27

「イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路」

NETFLIXオリジナル。スティーブン・キング原作。割とよくできたホラー映画。たぶん、映画館の暗闇で大画面で見ると結構怖いはずという印象だが、14ichPCの画面では怖さは半減していると思う。

その残念さを補っているのが、メッセージ性。これは原作の力なのだろう。

お話の舞台は、入ったら出られない叢の迷路。登場人物たちはその中で、死を繰り返しながら永遠とも思える時間を彷徨う。彼ら6人のうちたった1人だけが、これまでの自分の行いや考え方を述懐し後悔している。この作品の言わば語り手になっている。恋人が妊娠したとき、自分の学歴や経済力の無さから堕胎を望んで、それが元で別れることになったことを、繰り返し自問自答している。

恋人の方はそのことを多少根に持ってはいるが、同時に、自分ひとりでは生まれてくる子供を育てる自信がなく、養子に出そうとしている後ろめたさもある。とはいえ、身重の体でこんなわけのわからない状況に投げ込まれ、それどころではない。彼女の作中の役割は、妊娠中の女性が感じる様々な不安を体現することだろう。そこにホラー風の味付けを重ねているのが、この作品の秀逸なところだ。男にはわかりかねるその不安を、こういう形で見せてもらうと、少しは分かった気になれる。

いささか複雑な事情を抱えた元恋人達と彼女の兄で3人。その一組のほかにもう一組、夫婦と子供一人の家族も登場する。こちらはDVの問題提起だ。この父親が結構怖い。役者がいい具合に怖さを出している。陽気で気さくな人間を装っているのが一層怖い。お話の中盤以降の修羅場で本性を現してくる。

結局、彼らの永劫と思えたループは、一人の犠牲によって断ち切られ、物語は終結するのだが、結婚とか妊娠中絶とかについて、何某かの思いを観る者に残してくれる。身重の彼女が迷った末に決めたことも、ちょっぴり明るく清々しさを感じさせる、いい終わり方でした。

|

« 「アイ・アム・マザー」 | Main | 「The KING」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事