「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
グザヴィエ・ドランを天才だと言う人は多い。もちろんその通りだけれど、私はむしろ、独創的な人と呼びたい。ものごとを捉える視線や切り口、そして見せ方に、独特なものを感じるからだ。他のどの人とも似ていないと思う。今回もそれを見せてくれました。
特にストーリーが奇抜なわけでもなく、テーマが珍しいわけでもなく、設定が入り組んでもなく、アクションなどとは無縁で、ただ、母と息子とがつくる濃い影が連綿と続いている。濃いのだ。この人の作品は。そして比較的長い。テンポがいいとは言えない。そういう種類の作品ではない。
見ると結構疲れます。が、それに見合う満足が残ります。
そうそう、ちょっと特筆すべきこととして、例によってゲイが何人か出てくるのだけれど、今回はそれを特別なようには描かず、男女の恋人に置き換えてもなんら作品に支障はないような描き方をしていました。
世の中が進化したのか、監督が進化したのか、よくわかりませんが、ごく自然でした。