「トゥルーマン・ショー」
あれ?小雪がハリウッド映画に出てる・・と思ったら、ナターシャ・マケルホーンさんでした。というのはさておき。20年以上前の作品。
物語というものは仮りそめですが、人が現実を生きる力を育むものでもあります。けれども、人が仮りそめの世界に閉じこもったまま出てこなければ、逆に生きる力を損なうことにもなり得ます。
物語をはじめとする、人の想像から生まれる事物の、そこが微妙な点です。
本作は、その分水嶺をくっきりと示します。仮りそめの世界の壁を突き破り、現実へ踏み出していく主人公に、視聴者は喝采を送りますが、そのとき主人公が真に生きる力を得たのに対して、テレビの前の視聴者はどうだったか。すぐに番組表で次の仮りそめを探し始める彼らの方が、むしろ生きる力を阻害されているように見えます。
本作はそのようにして、仮想世界に閉じ込められた男が現実に踏み出す強さを描くと見せながら、実はその反対に、現実世界に生きながら仮想に溺れる我々の弱々しさを見せつけてきます。皮肉がきついですね。
また、そうした仮想空間を作り出す「クリエーター」と称する人々の傲慢や動機の不純さも同時に突き付けてきます。
xRのような仮想空間を作り出す新しい技術が発展するいま、本作が示す現実と仮想の関係を改めておさらいしておくのは無駄ではないと思いました。