「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」
探偵小説はあまり読まないし、映画も見ない方だけど、これは面白かった。満足しました。原作があると思ったら、100%オリジナルだとか。驚きです。すごい完成度。ミステリだからネタバレはできないのがくやしい。ひとつだけ言っておくと、「大丈夫、きっとうまくいく」。
謎解きで進む小説が映画になったとき、多少の違和感が残ることがままあります。原作の意図を損なわないようにするあまり、映画としてはぎくしゃくした感じがあったり、妙に説明的過ぎたり。
ところが本作は、たいへんスムーズに進みます。謎はもう説明され解けている。それなのに展開がまるで読めない。定番の展開ならこうだよねと見ている側が思うそばから逸脱していく。確かにのどに刺さった棘のように最後まで残る疑問があるけれど、展開に振り回されて考えるのは後回しになる。見えている現象や事実はひとつだけれど、それを読み取る登場人物や観客の先入観が、話を複雑に不可解に見せる。おまけにそうなるぞと探偵に堂々と宣言させている。二重化の妙とでも言うか。
もうね。してやられましたよ。
しかも、登場人物が別の登場人物に向かって言う台詞が、実は観客に向けたメッセージだったことに、後になって気づかされる。二重に二重化されているとでも言えばいいのでしょうか。悔しいけど、これだけ鮮やかにやられると、爽快でもあります。
お話をこの結末に導いたものが、結局何だったのか。探偵は最後にそれを犯人に告げるのですが、しんみりします。登場人物たちの偽善を見てきた後では尚更。
ダニエル・クレイグが相変わらずかっこいい。
ライアン・ジョンソンはLOOPERの監督なのね。こういう緻密な映画はうまい。
週末の時間を使って損のない映画です。