「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
最初の公開時に見たときの感想はこれ。
http://hski.air-nifty.com/weblog/2016/12/post-0731.html
その時に感じたことはそのまま変わらないけれど、リファインされた本作はもっと優しさに満ちているように見える。元の作品をそれほど覚えているわけではないけれど、ディテールが以前よりずいぶん描き込まれている感じがして、その分リアリティが増している。
普通、リアリティというと過酷な現実のことを指す冷たく固めのニュアンスがあるけれど、この作品におけるリアリティとは、より柔らかく平和で優しい日常のことを指している。その正反対の感覚から、観客は今如何にギスギスした世界に生きているのか、そのことに気づかされてしまう。今の今までそんな風には全く思っていなかったのに。
もちろん、戦争の過酷な側面も本作は描いている。日常に入り込んできて新たな日常になるところも、その不可逆性も。ただ、起きてしまったことはそれとして、受け入れて日々生きていく普通の人々の温もりが過酷さを癒していくことが、本作では一層はっきり描かれているように見える。前作よりもさらに、希望や善意の存在を身近に感じさせてくれる。
心の健康にとてもよい作品でした。
私はこの作品の原風景を自分のものとして共有できるけれど、平成以降に生まれたくらいの若い人たちがどう感じるのかは、少し気になります。