「ウインド・リバー」
劇場公開時に見逃して残念に思っていた作品を、年末年始にネットで見る。いい世の中になったものです。
本作は、雪に覆われた僻地で起きた性的暴行殺人事件を元に作られたもの。事件の解明に協力する寡黙なハンターをジェレミー・レナーが渋く演じています。
これが世界で公開されたのは2017年。まさにこの年、MeToo運動が広く知られる端緒となったワインスタインの一件が明るみに出たわけですから、タイムリーな公開だったと言えるでしょう。
MeToo運動については賛否両論があるようですが、少なくとも、幸せを掴んだ者への妬みから大勢が寄ってたかって嬲り殺すことの愚劣さを肯定する人は居ないでしょう。本作は、群れることで虚勢を張る卑怯者たちの醜さとその報いとを見せてくれます。
報いの結果、卑怯者たちが滅びたからといって、辱められて死んだ者が生き返るものでもなく、生き残った縁者たちの苦渋や後悔はそのまま残ります。けれども、同じ立場にある彼らが、互いの中に生きる力をどうにか見つけていく様子をも本作は描いていて、それが何ともいえない味わいとなって残ります。
善きこと、善き人々の姿を見せてくれる良作でした。