「蜜蜂と遠雷」
音楽はさっぱりわからないけれど、劇場に響き渡るピアノの音は素晴らしいと思いました。小学生の感想文のようですが。
それもそのはずで、実際に演奏しているのは、日本でも指折りのピアニストたちだそうです。もうね。それだけでおなか一杯。見てよかったわー。もちろん、生の音楽が持つ一回性は映画にはないけれど、そこはまあ少し目を瞑りましょう。
で、感想おしまいでもいいのだけど。
ピアニストという職業を人との争いの場としては描かずに、むしろ、音楽に魅せられた人々の共鳴する様を描いているのがとてもよいです。
この種の題材で、音楽とは関係ない黒い感情を絡めて描いてしまう作品も多いけれど、本作にはそうした嫌なところは全くありません。見ていてとても清々しい気持ちになれます。集中感、没入感、浮遊感、そして共鳴。
音楽の良さって、何かを洗い流して純化してくれるところにあるんだなあと、この作品を見ていると思えてきます。
ほんの少しだけ欲を言うと、演奏中のシーンは役者の上半身と鍵盤を踊る手とを交互に切り替えてつないでいくのですが、役者が映っているときの腕の動きが曲とシンクロしていない感じが微妙に目立って、そこだけ気になりました。でも些細なことです。
映画はいろいろな芸術を取り込んで見せてくれますが、本作はその種の作品の中でも出色の出来と言えると思います。
(そうそう、こういう感じ)
https://natalie.mu/eiga/pp/mitsubachi-enrai