「楽園」
吉田修一という人の小説は、結構映画化されている。映画化に向いているかというと、よくわからない。「悪人」はまあ悪くなかったか・・「怒り」は難解だった。本作「楽園」も、わかりにくいと言えばそう。
確かに、登場人物それぞれが思い描く楽園というものがあるのだろう。けれども作中では、楽園「ではない」ものが繰り返し描き出される。そのことで、楽園とは何か、それが具体化することなど果たしてあるのだろうか、と考えさせたいかのようだ。
本作では、日本の田舎のえげつなさと閉鎖性が、しつこく繰り返される。個々のケースで見れば、まあそういうものだろうし、関わらなければいい程度のものだが、それらを少し長めの時間軸や登場人物の重なりでつなぎ合わせて、全体を貫くテーマを持たせようとしている。オムニバスというほど個々の件がばらばらではないけれど、だいたいそんな感じ。
それにしても、これを見る限りでは、田舎というものが自壊していくのは必然のようにも見える。もちろん、田舎の全てがそうではないだろうけれども、多くの田舎が末端から消えていくのは避けられなさそうだ。若者は都会へ出たいし、外から来る人が入れなければ先は見えている。当たり前すぎる結果。
私には田舎というものがないのだが、あちこちツーリングをする中で土地の人と多少言葉を交わすこともあって、映画で描かれているような閉鎖性を感じることがしばしばあった。旅行者の私に対してではなく、その地へ引っ越してきた地域経済の担い手に対する姿勢が、そのようなのだ。
そういう残念なところが、田舎には確かにある。人口減の中でどうなっていくのか、気にかけたところでどうしようもない。
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そうはいっても、もう少しましな感想が浮かばないものですかね。暗い結論になるのは原作のせいですからね。たぶん。(笑