「空の青さを知る人よ」
「井の中の蛙大海を知らず」に続きがあるとは知りませんでした。検索してみると、例えばこんなまとめがあります。
https://biz.trans-suite.jp/20675
それによると、中国から日本に渡ってきたあと付け加えられたフレーズだそうで。何事にもバランスを取ったり視点や切り口を変えてみる、我々の得意なスタイル。一面の真理でもあります。大望を抱いて誰もがそれを達成できるはずもない現実に、向き合う処世の言葉でもあるかもしれません。
映画はその辺りを匙加減よくまとめています。SF的な小道具を使って、10代後半と30代とを出会わせ、理想と現実を向き合わせることで物語を生んでいる。そのファンタジーを使うのは一人だけで、他の人々は、親子、姉妹のように、ごく普通の世代間のつながりにして、現実にリンクさせているあたり、上手いです。
キャッチコピーで“二度目の初恋”物語と言っていて、もちろんそれがお話の軸なのですが、関わる人々の別の意味での成長物語が同時進行していて、厚みを感じさせます。むしろ、姉と妹の物語の方が、中心にあるようにも見えます。そういう多義的なつくりが、作品の質を上げています。
背景画も力が入っている。日本の地方の風景を克明に描いていて、これくらいが今の時代の標準になってきているとしたら、なかなか凄い。ハードルが上がっている感じです。
アニメをたくさん見る人にとっては、ある種のパターンかもしれませんが、たまに見る立場からすると、結構いい作品に思えました。映画は一発芸ではもたない長尺の世界なので、作品のレベルが高いのはむしろ当然なのかもしれません。