「ボーダー 二つの世界」
二つの種族がある。わけあって違う種族の中で育てられた者が、自分のルーツに目覚める。その際、同じ種族のはぐれ者と最初に出会い惹かれるが、その憎悪に巻き込まれる不幸がある。道を誤るかに見えたが、育ての親から教えられた善良さに救われ、はぐれ者を退けるものの、深く傷つく。
同族の絆と、己が善と信じる生き方との間で選択を迫られるのが、お話の肝。
割とありがちな筋書きだが、種族の設定が面白く、それに付随してファンタジー色の強い脚色がある。
例えばこれがアバターのような見目麗しいと言えなくもない異星人だと、また違った印象になるだろう。そこをあえて、この種族を持ってきたところに、少しキワモノ感を覚えなくもない。好き嫌いはその印象によって分かれるのでしょう。
お話自体はしっかりした骨組みで、悪くないです。
巷ではダイバーシティが持て囃されるけれど、どの程度までなら受け入れ可能なのか、暗に問いかけてきているような気もします。どうでしょうね。
公式サイトに載っている著名人たちのコメントが、様々な切り口を示して、この作品の奥深さを物語っています。
エピローグで主人公は、僻地に隠れ住む善良な仲間の誘いを受け取るわけですが、北欧人の間では、あの国ってそういう神秘を湛えているという位置づけなんだろうか、というあたりに微笑ましさを感じましたです。我々にとっての、遠野物語みたいなものなんでしょうか。