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2019.09.06

「アス」

名付けるとすれば、カジュアルホラー。

最初の導入部がとりわけうまい、こわい。気味悪い。

細かく言えばところどころ綻びはあるけれど、出だしでしっかりハートを掴まれれば、多少のことは大目に見てもいい気分になります。

この監督さんは、あくまでも怖さを映像化することに長けていて、それ以外の何かを込めようという意図は薄いように思えます。だからこちらも、そのようにシンプルに受け止めればいい。

たぶん、自分と向き合うことの意味、とか、自分自身に潜む残虐さやエゴとかいう見方もあると思うけれど、この監督はそんなところには重きを置いてなさそう。

「ゲットアウト」のときは、それがまだ分かっていなくて、何かを読み取ろうとしてすれ違ったけれど、そんな必要はないのだった。ただシンプルに、怖さ・・というか気味悪さを楽しめばいい。

怖さの質でいうと、暴力の怖さではなく心理の怖さ。普段は心の奥底に沈んでいる恐怖を釣り上げるリズムというか間合いのようなものを、この監督はよくわかっている感じ。

これでどう。ちょっとこわいでしょ、ふふふ。てな感じで徐々に黒い沁みが広がってくるような。

程よいところで、ヒロインの旦那のとぼけた親父ギャグなんかを添えているのもいい味わい。監督のコメディアンとしての経験が効いているのかも。そして、息抜きと思わせたこのお笑いを、娘と二人だけの場面で使っておくのが、最後で最大の恐怖が露わになるところでものすごく効いてくる。ニクイね。

その最後のヤツを見せられてから、映画が終わって遡って考えると、いろいろ思い当るところが他にもあって、二度美味しいです。

ただ、弟と影の対決シーンは少し矛盾を孕んでいて、そこが最初に言った綻びなんだけど、まあいいでしょう。観客が気付く順番まで計算に入れて作っているのだろうから、手が込んでる。テヘペロってことで。

宗教絡みみたいなどす黒さがないホラーで、いい味なんじゃないでしょうか。
ずっとこの路線でいけるのか、それとも何か新機軸を打ち出すのか、今後に注目したいです。

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