« 「二ノ国」 | Main | 「カーライル ニューヨークが恋したホテル」 »

2019.08.30

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン...ハリウッド」

これは、傑作という言葉とは少し違う気がするけど、とてもいい映画だ。それだけは間違いなく言える。
辛い境遇の中に、友情とか愛とか、温かい気持ちが満ちている。特に最後の方がそうだ。

タランティーノの作品は、もちろん全部見てはいないけど、いつも多少殺伐としたところがあるように思えた。映画の技法としてではなく、登場人物や作風が醸し出す空気が。

ところが、本作は・・・

描く対象を大切に慈しむような、この雰囲気はどうだ。タランティーノ、とうとう大成したのだろうか。

いや、もちろんこれまでのタランティーノの殺伐感は、本作においてもヒッピー達に色濃く表れてはいる。けれども、それは本筋を際立たせるために対置されるにすぎない。

シャロン・テートという人は実在の俳優さんだそうだ。カルトな事件に巻き込まれて悲惨な最期を遂げた。そういう背景を取り込みながら、事実とは違う、幸せな暮らしぶりを描き出している。

デジタル技術に席巻されつつある業界の中で、まだアナログが主流だった頃を、そのように描きたいと、彼は思ったのかもしれない。

デジタルネイティブな世代に、この作品がどう響くのかはわからないが、ウェットなもので世の中が満たされていた頃を、これほど印象深く掘り起こしてくれたことに、感謝したい気持ちでいっぱいです。

これはひょっとすると、私的な映画なのかもしれません。映画人タランティーノの心の裡を覗き込むような。。

 

|

« 「二ノ国」 | Main | 「カーライル ニューヨークが恋したホテル」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事