「世界の涯ての鼓動」
素晴らしい。
まるでヴィム・ヴェンダースみたいだと思って公式サイトを見たら、ヴィム・ヴェンダースでした。
「アランフェスの麗しき日々」以来の際立った感じです。
この空気に、アリシア・ヴィキャンデルの顔立ちとジェームズ・マカヴォイの表情がぴったりはまって、言うことありません。
たぶん、こうした知的で瞑想的でありながら静かに燃えさかる情熱というものを、嫌う人も少なくないだろうと思います。
単純なアクションを楽しむ人も、辛辣な分析を揮う人も、この作品には向きません。観客を選ぶ映画です。
* * *
前半は、知的な会話と愛の賛歌。
後半は、哲学と宗教と焦がれる想い。
離ればなれの二人が、こんなにも違う二つの世界の併存に重なって、引き裂かれた現代の不条理と、相手を想う気持ちの強さを際立たせます。
一体どう思惟を凝らせばこんな筋書に思い至るのか。
それぞれに信念をもって、違う世界で生きてきた人々の、折り合えない限界点で、改宗を迫られた囚われの男がアラビア語でつぶやいた一言に、我々は愁眉を開かれます。
こんな作品、そうはないです。