「ドッグマン」
貧乏くじを引いてしまう男の話。
人はよいのだが、自我というものが弱く、日常と堕落との境目が曖昧で、いつのまにか不条理の罠に落ちてしまう、そういう男。根っからの悪人には利用しやすい奴と映る。
悪人の中の善人風の面を見て、仲間だと錯覚する。気付いた時にはもう手遅れ。犯罪に巻きこまれ、それでもなお仲間と思い違いした悪人を庇う。少し、欲もあったかもしれない。結局、罪を被って刑務所で過ごした後、戻ってからが・・凄惨だ。
人が悪の道に入ってしまうのは、案外ちょっとしたことからなのだろう。そうなってからも、意識せずに惰性や成り行きで、次第により大きな悪を為してしまうのは、もともとの自我の弱さゆえなのだろうか。
気を付けないとね。
くわばらくわばら。
主演のマルチェロ・フォンテさん、全くの無名俳優だそうだけれど、とてもそうは思えない。温厚で小心な人の中に潜む鬼を、見事に演じてくれます。ひょっとすると、監督と脚本が役者に大きな影響を及ぼしているのかもしれないけれど。
そして、監督のマッテオ・ガローネ。この名前は憶えておかなければ。