「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」
本館は1911年竣工だそうで、100年を超える歴史を有することになる。
wikipediaで見ると、その規模の大きさに驚く。
大小合わせて88の地域分館と、4つの専門図書館を擁して、予算規模は360億円ほど。
日本の国立国会図書館の年間予算は、(h)ttps://bit.ly/2Y3vPie を見ると270億円程だから、その約1.3倍程度の規模になる。これが、NPOが運営する私立の図書館だというのだから、日本人の感覚では想像もつかない。
映画では、本館のほか、いくつもの分館や専門図書館の活動を、ナレーション無しの映像をつなぐだけで見せていく。
図書館というものは、静かな空間のはずだが、この映像を見る限りでは、どちらかというとカルチャースクールかと思うような賑やかさだ。
本の著者を招いたインタビューが、本館正面玄関入ってすぐのホールで開かれている。
職業紹介の催しがあり、消防士が仕事内容を説明している場面がある。
ちょっと素人っぽいカルテットによる演奏会がある。
点字教育の現場がある。
黒人文化を研究する施設では、政治的な議論が沸騰している。
幼児と母親のためのお遊び会みたいなのがある。
高齢者のためのダンススクールがある。
子供向けのロボットプログラミングの教室がある。
ネット弱者のためのパソコン初心者向けスクールがある。
あれもあるこれもある、一体これは図書館なのか、というくらいにいろいろある。
加えて、裏方のミーティングの様子が折々に挿入されて、図書館運営上の課題や、目指すべき方向性などが紹介されていく。
このカオスのような状況を説明するカットが、途中に挿入されている。
「本の置き場ではありません。図書館とは人なんです」
その意味するところは、地域を結びつける役割を担っているということのようだ。
もちろん、スタッフミーティングでは、予算配分を巡って、人気のない本でも揃えておくのが図書館の使命だという意見と、閲覧数が期待できるものに予算を使うべきという意見が取り上げられて、NYPLも図書館としての普遍的な課題に悩んでいることもわかる。
ほかにも、世の中の電子化にあわせて、ネット接続環境の充実や電子ブックの品揃え拡充の話題も出てくる。
これらがほぼ全て、登場するスタッフやゲストのトークで埋め尽くされていて、息つく間もない。言葉の洪水とでも言うか。それが途中休憩挟んで3時間半にもおよぶ。
見ていて相当疲れるのだが、さて、では見終えて何が残ったか。
なるほどいろいろな活動の断面はわかったのだが、映画作品としては、何を言いたかったのかはよくわからない。
この作品に、中流世帯以上の人々は出てこない。登場する人々のほとんどが、障碍者であったり、貧しい人であったり、そしてなによりアフリカ系が多い。
アフリカ系の人々の苦境についての話は、相当な時間を占めていて、ニューヨークという街にとってこの問題がとても大きいのだということは伝わってくる。
地域の繋がりを保つことと、それらのことは、関連しているということなのだろうか。
まあ、変な総括をするよりも、雑多な現状をそのまま見せたということなら、それはそれでありかと思いました。