「天気の子」
スペクタクルとジュブナイル。なんていい取り合わせなんでしょ。
この監督さんのいつものパターンですね。
比較するものではないと思いつつも、「宮崎駿作品」と言っても様々なパターンがあって一括りにしづらいのに比べて、「新海誠作品」と言うと、割と一括りになりそうです。感動を売る商業ベース、パターンはいつものアレで、という感じ。
まあ、ディズニーも似たところはありますけど、あちらは意外性や多様性を、もっと上手に取り込みます。
この監督の作品に拒否反応を示す人が一定数居るらしいのですが、業界事情的なところは措くとして、作品の特徴でいうなら、中二くらいのナイーブさがストレートに出ていて、酸いも甘いも噛分けた大人が見るとこっぱずかしくなる、みたいなとこかもしれません。
わたしはそういうの好きですけどね。
とまあ、ひととおりくさしてはみたものの、やっぱり毎回、素晴らしい絵と、たぶん大勢で練り上げたストーリーとで、今度も楽しませてくれます。
この年齢の主人公たちだから、多少ナイーブなのは当然ですが、日常の言動が実際と似ているのか、それともかなり盛ったものなのか、そこは私にはわかりません。でも夢も希望も見失ってしぶとく現実を生きるおっさんには、刺さるところ大です。
ときどきこういうの見て、こころの洗濯するのは、いいことなのじゃないでしょうか。
以下ネタバレで。
* * *
この作品で、予定調和を壊していていいなと思った点がひとつ。
東京が水没しようが関係ない、それより彼女を取り戻したい、という強い思いを貫いたところです。彼女一人が犠牲になればみんなが幸せだなんて理屈は、絶対認めない。すばらしい。
その結果、東京はノアの洪水にあったように水没するのですが、それもまたいいじゃない、と思えてきます。彼女が戻ってきてくれて、私は嬉しいですよ。
地球温暖化の話を聞くたびに、東京が暑いなら都を仙台に移せばよろしかろと思わなくもない自分を再発見したりもするわけです。もちろん、ポリコレ的にNGなのは承知です。
でもねえ、作中でも言及があるとおり、長い地球の歴史の中の、短い人類史の中でさえ、いま程度の変動はいくらでもあって、王朝は滅び都は土に還ってきたのですから、現状の上辺だけの繁栄が永遠だと思わない方がいいと思うんですよね。
そういう視点を取り込んで、大方の予想を裏切る感動の結末になっているのが、本作の一番光っている点だと思いましたですはい。