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July 2019

2019.07.27

「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

本館は1911年竣工だそうで、100年を超える歴史を有することになる。

wikipediaで見ると、その規模の大きさに驚く。
大小合わせて88の地域分館と、4つの専門図書館を擁して、予算規模は360億円ほど。
日本の国立国会図書館の年間予算は、(h)ttps://bit.ly/2Y3vPie を見ると270億円程だから、その約1.3倍程度の規模になる。これが、NPOが運営する私立の図書館だというのだから、日本人の感覚では想像もつかない。

映画では、本館のほか、いくつもの分館や専門図書館の活動を、ナレーション無しの映像をつなぐだけで見せていく。

図書館というものは、静かな空間のはずだが、この映像を見る限りでは、どちらかというとカルチャースクールかと思うような賑やかさだ。

本の著者を招いたインタビューが、本館正面玄関入ってすぐのホールで開かれている。
職業紹介の催しがあり、消防士が仕事内容を説明している場面がある。
ちょっと素人っぽいカルテットによる演奏会がある。
点字教育の現場がある。
黒人文化を研究する施設では、政治的な議論が沸騰している。
幼児と母親のためのお遊び会みたいなのがある。
高齢者のためのダンススクールがある。
子供向けのロボットプログラミングの教室がある。
ネット弱者のためのパソコン初心者向けスクールがある。

あれもあるこれもある、一体これは図書館なのか、というくらいにいろいろある。

加えて、裏方のミーティングの様子が折々に挿入されて、図書館運営上の課題や、目指すべき方向性などが紹介されていく。

このカオスのような状況を説明するカットが、途中に挿入されている。

「本の置き場ではありません。図書館とは人なんです」

その意味するところは、地域を結びつける役割を担っているということのようだ。

もちろん、スタッフミーティングでは、予算配分を巡って、人気のない本でも揃えておくのが図書館の使命だという意見と、閲覧数が期待できるものに予算を使うべきという意見が取り上げられて、NYPLも図書館としての普遍的な課題に悩んでいることもわかる。

ほかにも、世の中の電子化にあわせて、ネット接続環境の充実や電子ブックの品揃え拡充の話題も出てくる。

これらがほぼ全て、登場するスタッフやゲストのトークで埋め尽くされていて、息つく間もない。言葉の洪水とでも言うか。それが途中休憩挟んで3時間半にもおよぶ。

見ていて相当疲れるのだが、さて、では見終えて何が残ったか。
なるほどいろいろな活動の断面はわかったのだが、映画作品としては、何を言いたかったのかはよくわからない。

この作品に、中流世帯以上の人々は出てこない。登場する人々のほとんどが、障碍者であったり、貧しい人であったり、そしてなによりアフリカ系が多い。

アフリカ系の人々の苦境についての話は、相当な時間を占めていて、ニューヨークという街にとってこの問題がとても大きいのだということは伝わってくる。
地域の繋がりを保つことと、それらのことは、関連しているということなのだろうか。

まあ、変な総括をするよりも、雑多な現状をそのまま見せたということなら、それはそれでありかと思いました。

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2019.07.26

「ペット2」

うーん。オムニバスっぽくしたかったんだろうか。
残念ながら、焦点が定まらず、話がぶつ切れで、つまらなかった。
イルミネーション、ちょっと息切れかな。
グリンチは面白かったから、また頑張ってほしい。

 

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2019.07.22

「アポロ11 完全版」

50年前ですよ。この人類史上に刻まれる快挙が成し遂げられたのは。
改めて人間社会の力に深い感慨を覚えます。

記録映像をつないだだけですが、要所に音楽が入って、テンションが高まります。

打ち上げシーン。静々と上昇していきます。巨大な炎の力と、それを押さえつけようとする巨人の重みの拮抗は、悪魔的でさえあります。サターンですし。

舞台が宇宙に移ると、少し熱は冷めますが、切り離しやドッキングの緊張感は全く色褪せません。子供のころ、親がこのために買ったカラーテレビで見たそのままです。

着陸船が着地する前の数十秒間。息が止まる思いでした。地上の管制室のスタッフたちが口にしたとおりです。

そして、あの偉大な一歩。言葉もありません。

月面を離れてからの軽快な帰路。楽しい我が家へ一直線。

最後に、太陽の半分と言われた大気圏突入の高熱。通信の途絶に手に汗握ります。

突然明るい空に開くパラシュート。無事帰還です。

感動しますね。本当に感動します。

* * *

もちろん、いまはさらに高度化したロケットの開発競争が花盛りなのでしょうけれど、原始的な技術だけを手に最初の1歩に敢然と踏み出した人々の意志、勇気、周到さ、団結に拍手を送りたいです。

 

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2019.07.21

「チャイルド・プレイ」

知らなかったけど、すでに7本ものシリーズが作られているロングラン作品らしいです。
人形というのは基本的に不気味なものだから、それで人気が持続しているのでしょうか。

ただ、本作の前までは、人形が邪悪な意志を持つのは、ブードゥーの秘術の力で殺人鬼が乗り移ったからという設定だったのが、本作では流行りのAIっぽいものに変わっています。怖いというより、少し白ける感じ。あんな動きの鈍い相手、捕まえて電源落とせば終わりでしょ。
邪教の力は原因不明だから怖さが生まれるのであって、相手がコンピュータではね。

とはいえ、やられたと思ったチャッピーが、愚かな人間によって復活し、邪悪さを増していくエスカレーションの波は、よくできています。そこが見どころでしょうか。

子供の言葉を字義通りに受け止めて、真剣に実行しようとするあたりは、AIなどというものに対する警鐘になっています。たしかに、家の電気系統の制御をそんなものに全部握らせたら、やはり少しアブナイ。

全体には、登場人物のおバカな感じで笑わせたいのかと思うほど、ホラーというよりはスプラッターコメディに振っている感じです。

まだまだ続編の計画があるそうだけれど、あんまり見る気はしないかな。

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2019.07.19

「天気の子」

スペクタクルとジュブナイル。なんていい取り合わせなんでしょ。
この監督さんのいつものパターンですね。

比較するものではないと思いつつも、「宮崎駿作品」と言っても様々なパターンがあって一括りにしづらいのに比べて、「新海誠作品」と言うと、割と一括りになりそうです。感動を売る商業ベース、パターンはいつものアレで、という感じ。

まあ、ディズニーも似たところはありますけど、あちらは意外性や多様性を、もっと上手に取り込みます。

この監督の作品に拒否反応を示す人が一定数居るらしいのですが、業界事情的なところは措くとして、作品の特徴でいうなら、中二くらいのナイーブさがストレートに出ていて、酸いも甘いも噛分けた大人が見るとこっぱずかしくなる、みたいなとこかもしれません。

わたしはそういうの好きですけどね。

とまあ、ひととおりくさしてはみたものの、やっぱり毎回、素晴らしい絵と、たぶん大勢で練り上げたストーリーとで、今度も楽しませてくれます。

この年齢の主人公たちだから、多少ナイーブなのは当然ですが、日常の言動が実際と似ているのか、それともかなり盛ったものなのか、そこは私にはわかりません。でも夢も希望も見失ってしぶとく現実を生きるおっさんには、刺さるところ大です。

ときどきこういうの見て、こころの洗濯するのは、いいことなのじゃないでしょうか。

以下ネタバレで。

* * *

この作品で、予定調和を壊していていいなと思った点がひとつ。

東京が水没しようが関係ない、それより彼女を取り戻したい、という強い思いを貫いたところです。彼女一人が犠牲になればみんなが幸せだなんて理屈は、絶対認めない。すばらしい。

その結果、東京はノアの洪水にあったように水没するのですが、それもまたいいじゃない、と思えてきます。彼女が戻ってきてくれて、私は嬉しいですよ。

地球温暖化の話を聞くたびに、東京が暑いなら都を仙台に移せばよろしかろと思わなくもない自分を再発見したりもするわけです。もちろん、ポリコレ的にNGなのは承知です。

でもねえ、作中でも言及があるとおり、長い地球の歴史の中の、短い人類史の中でさえ、いま程度の変動はいくらでもあって、王朝は滅び都は土に還ってきたのですから、現状の上辺だけの繁栄が永遠だと思わない方がいいと思うんですよね。

そういう視点を取り込んで、大方の予想を裏切る感動の結末になっているのが、本作の一番光っている点だと思いましたですはい。

 

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2019.07.17

「ハッピー・デス・デイ 2U」

1は、ちょっとビッチな女子大生が、似たようなシチュエーションの時間を繰り返し生き直しながら、自分の欠点に気付いていく、面白いけど割とお手軽な話でしたよ。

それがなんですかこの2は。本格的なドラマになっちゃってるじゃないですか。お母さんが・・・子供のころ亡くなったお母さんが、別の平行世界では生きているんですよ。思わずもらい涙ですよ。

どうするツリー。この別の世界に留まる?
彼氏は別の嫌味な女に取られちゃってるけど。

そういう葛藤を含ませているわけです。これは1,2を続けて見て初めて真価を発揮する作品ですねー。結構シリアスな場面を導入しながらも、ノリは相変わらずコミカルで軽快さを保っています。このあたりのバランスとか、雰囲気の切り替え、テンポなど、とてもよいです。

ほかにも、友達の危機を救ったり、殺人鬼と対決したり、いろいろ盛りだくさんな仕掛けがあちこちに埋め込まれていて、単調さも回避しています。上手いですね。

で、葛藤の末に、彼女は気付くわけです。お母さんたしかにここでは生きていてくれてるけど、それは自分の知っていたお母さんとは違う、ということに。

同じ過去、同じ記憶を共有していた、本物のお母さんとは微妙に違うことに。
気付いてしまうんですねー。当たり前といえばそうですが。
それで、彼女は悟るわけです。過去を捨て去ることはできないってことをね。

物語の王道を行く、なかなかいいお話です。

結局、元通りに納まって、 少しは大人になったのかと思ったら、最後のその締めは何ですか。
性格の悪さなんて、そうそう簡単に直るもんでもなさそうです。(^^;

 

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2019.07.15

「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」

このMJ、わりといいです。キルスティン・ダンストもエマ・ストーンも、ちょっと違う感じがしていましたが、このゼンデイアという女優さんは、スパイダーマンの彼女らしい感じがします。

 

お話はまあ可も不可もない。と思っていたらひっくり返って、そしてスタッフロールのあと、さらに・・もう頭が混乱します。インフィニティウォーの結果生まれた5年間の空白も混乱の元ですが、それに輪をかけてわけがわからない。アメコミを読んでいるとこの辺はわかるのかもしれません。

 

ヨーロッパ旅行の風景を楽しめて、まあよしとしておくくらいでしょうか。

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「トイ・ストーリー4」

いやほんと、このシリーズには驚かされます。
もうさすがにネタ切れだろうと思って、あまり期待もせずに見に行ったのですが、こんな風に設定に手を入れて新しい命を吹き込むとは。1,2,3それぞれに良かったですが、この4は、これまでのどの作品にも増して素晴らしい。

今回は、たくさんいるおもちゃ達全部を使うのではなく、主要キャラクタに絞ってドラマを作ったのがよかったです。濃くなった。特にボーは、ディズニーが描き出すいまどきの女性像がわかりやすく反映されています。強く、賢く、そして自由。ウッディだけでなく見ている方も惹かれます。

人形として生まれた者の役目は、子供たちを支え育てること。いままで気付かなかったのですが、それは家庭を支える主婦の像と重なります。それが、今回どのように変化するのか、またその中で不変のものは何か。それは見てのお楽しみです。

そして、今回の愛されキャラ、フォーキーは、子供に買い与えられるのではありません。子供がはじめての登園の日、不安の中で自ら作り出します。この考え方は、これまでとは違っていて、些細なようですが重要です。子供と人形の関係を対等で互恵的なものにしています。

前作同様、今回も悪役がいます。前回は少々ネガティブな描かれ方だった悪役ですが、今回は、悪役にも三分の理を持たせてポジティブな印象です。ここの話の流れの作り方、最終的な収め方も上手い。

そしてそして、やはりボーです。かっこいいですね。ウッディに新しい世界を開いて見せてくれる存在。CGなのに、まるで生きているように豊かな表情を見せてくれます。技術がとうとう繊細な心の表現に追いついた、そういう感動があります。

それにしても、これでもう本当に完結でしょうか。寂しい気もしますが、また何か新しい趣向を考え出して、再び楽しませてほしい。そう欲張ってしまうほど、今作は出色の出来でした。

 

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2019.07.14

「きみと、波にのれたら」

いいよねえ。これも。

アニメーションとして絵が良いだけでなく、実写ではたぶん表現できないダイナミックな動きや事象を、ストーリーの重要な要素に組み込んで、見せる。泣かせる。要素が有機的に組み合わさっているのがいい。

もちろん、実際にはあり得ない、見ようによってはイカレた女の子の妄想で片付けられそうなシーン満載だけれど、そこは映画だし。逆に現実と少しずれている作品世界が、たくさんの現実のシーンを背景にすることで、リアルな感じを醸すのに成功している、ともいえそう。

ナイーブな感じはいつもどおりだけれど、ストーリーの流れの中でゆるせてしまう。そういう質の高さ、お話の筋の良さが、この監督の作品にはあると思う。

「夜は短し歩けよ乙女」はかなりキワモノにも拘わらず、あっけにとられて最後まで真剣に見てしまった。
「夜明け告げるルーのうた」は少しストーリーが破綻していて粗削りだったけど、やっぱり見入ってしまった。

本作はそれらの作品に洗練を加えてきている。あのリズミカルな歌と踊りのシーンはなかったものの、躍動感と透明感のある絵や動きはさらに磨きがかかった上に、伏線をサプライズな感動や展開につなげる語りのうまさがあった。基本は甘たるい青春ものなのに、飽きずに観られました。

湯浅政明作品、次も期待して待ってます。

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2019.07.13

「東京干潟」

この種のドキュメンタリーは、定期的に上映されて見にいくのだけれど、どれも味があっていい。単に自然を映すだけでなく、自然と人の関わりの大本を捉えている。
加えて本作は、この高齢者の人生も少し覗ける。

上映後の監督の舞台挨拶の中で、「現代史」と言っていたけれど、まさにそう。この年代の人たちには、日本人が自然の泥の中から徐々に立ち上がって築いてきたものと、同時に失ってきたものが、そこはかとなく匂い立っている。失ったまま鬼籍に入ることがほとんどだが、稀にこうして、自分の意志で泥へと立ち戻ってくる人がいる。そういう人は骨が太い。子供のように天真爛漫で、大人のように理非を弁えている。

ときどき見ると心が洗われる気がします。

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2019.07.07

「新聞記者」

期日前投票も昨日済ませたし、まあ見ておこうかなということで、有楽町の角川で見ました。ドキュメンタリー風のフィクションで、映画としては悪くない仕上がりです。

主演女優さん探しに苦労したそうで、結局韓国の人?が演じてました。そのため怪しさ倍増で面白くなってたのが皮肉といえばそう。

この件で、日本の芸能事務所は、当たり障りなく身過ぎ世過ぎする以上のものではないことが浮き彫りになってしまったのは、まあ仕方がない。この後公開予定の「記憶にございません!」みたいなコメディタッチの作品に期待しましょう。

その中で主演男優の松坂桃李は頑張っていて、これは国側の人間役てことで問題なしという判断でしょうか。

お話は、これまでマスコミネタになってきたあれこれを思い出させる趣向になっています。ことの真偽はよくわかりませんが、事実として、公文書が廃棄されたり改竄されたり元々おかしかったり海苔弁当のようだったり、さらに最近では無かったことになったりで・・・いや公文書おまえ酷い目にあわされてるんだなw、てことを改めて思い出しました。

それと・・そういえば一人亡くなってましたね。お役人が。
改めてご冥福をお祈りします。役人って大変な仕事なんだなと、ちゃらく生きているわたくしなどさえ、そう思います。

例の元文科省の偉い人が、この映画にも堂々出演してましたが、あれくらい図太く生きればいいのにねえ。出世とか適当でいいじゃない。全部話しちゃえばと思ったりするのですが、そうもいかないのでしょうね。個が確立していないサラリーマンで、世間体が何より大事なのは、誰も彼も似たり寄ったりですし。

最近、薬物絡みでお役人がまた処分されてたと思いますが、まーさか裏事情があったりしないでしょうねえ。いやですねえ疑り深くなってしまって。

まあ、選挙の結果は、経済の要因が一番大きいのでしょうから、この映画がさほど影響があるとも思えませんが、一応、時代を映す一本てことで、見ておいて損はないかなと思いましたですはい。

 

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2019.07.06

「ワイルドライフ」

静かなラストシーンが胸に迫って、見終わった後で涙が溢れてきてとまらない、素晴らしい作品。以下ネタバレは読まずに、劇場で観るのが吉。

* * *

このラストシーンは、なんでもない家族の肖像写真なのだけれど、そしてそれがエピローグ風に導入されているために、見る方は不意を突かれるのだけれど、この最後の絵が静止した瞬間に、これまでの来し方、これからの行く末が、すっと凝縮する。

もう元には戻せない美しい家族の過去が切なく胸に迫ってくる。これからどうなっていくのか、違う道を歩み始めて不安げな両親の間に入って、まだ14歳の少年の瞳が真っ直ぐ静かに輝いている。家族三人の道が交わって分かれていく二度とはない瞬間。

その何気ないけれど特別な一瞬を捉えて、映画は終わります。

最近の映画は、映画館の中で作品が完結して、後味を残さないように「配慮」するものが多いと思うけれど、この作品は、見終わった後の方が胸に迫ってくる。監督も、俳優も、スタッフも、本当に見事。特にエド・オクセンボールドが出色です。

今年のわたくし的BEST3間違いなしです。

* * *

ま、わたくしジュブナイル好きですからね。
キャリー・マリガン大好きでジェイク・ギレンホールも好きですし。
ちょっと、一点集中で褒め過ぎましたが、あの一瞬がこれほど輝いて見えるのは、そこまでの中身がこれまた素晴らしいからです。

手短に言えばこの作品は、世間的な成功とは程遠い普通の一生を送る大多数の核家族に共通の、幸せと不幸せを拾い上げているのだと思います。倦怠期を乗り切れなかった二人の失敗と、その結果ばらばらになっていく不幸を。それ以前の輝ける幻想と一緒に。

覆水盆に返らずのとおり、壊れた家族の関係は元通りにはなりません。でも少年がいます。きっと元通りに近いところまで両親を引き戻せると、信じているかどうかはわかりません。

でも、彼が知っている両親、その背中を見て育った良き人々の思い出を、せめて1枚の写真に残しておきたい、それが彼のこれから行く道の支えになるでしょう。あの一枚にはそういう意味があると思います。

健気という他に言葉を思いつきません。両親は、いつの間にか大人になった少年に、少し戸惑ってもいます。じんわりきます。

いやー。いいもの見せてもらいました。

少し付け加えておくと、両親の仲を裂くことになったお金持ちの老人は、これまた悪人ではありません。それどころか、母親と少年を夕食に招いた折に、少年に語って聞かせるエピソードからは、それなりの人物が伺い知れます。その彼が、しかし少年のつましい家族を壊すことになった。彼の罪でしょうか。たぶん違います。ただ知的でWILDなだけ。少年はこの枯れない老人のWILDも受け継ぐことでしょう。

そういう奥行きも備えた作品でした。

【追記】
あらためて、公式サイトの監督の言葉を読むと、このラストシーンが明確に像を結んだところから、映画化が進み始めたとのこと。納得です。

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2019.07.05

「アラジン」

にぎやかでよろしいんじゃないでしょうか。
最近歳のせいか、こういう賑々しいのを見ると少し疲れますが。

絵にかいたような悪役とガラスの天井をぶち破るお話で、たいへん啓蒙的です。
んで、おおっぴらに賞賛する意見が、まだあまり見えない気がするのですが、王女様の力の入ったポリコレ的歌唱に、少し戸惑うというか、様子見を決め込んでいる人も多いのかもしれません。まあ世間なんてそんなもの。気にせず王女様の谷間を楽しみましょう。

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2019.07.03

「ザ・ファブル」

この狂言回しの小島というチンピラがなかなかだなと思ったら、柳楽優弥だ。「誰も知らない」のあの子でした。目力は健在。でももうちょっとなんというか、極端じゃない役もあげてほしいなあ。虚無が宿っている目だから、なかなか普通の役は難しいのかもしれないけど。

まあでも、この作品では、小島という役は重要なキーだから、演じるのが彼でよかった。

なぜ小島がキーか。

ごく最近、吉本興業というところの構成員(というしかない。雇用契約書もないらしい)の芸人さんが、反社さんとのつながりが明るみに出て謹慎処分になったというニュースがあり、それについて、興味深い論考があった。
http://wpmu.hidezumi.com/?p=13939

よく知らないのだが、どうも日本の興行界というのは、やくざさんたちとは双子の兄弟のようなものであるらしい。ところが、芸人の経済的支柱が反社から放送局に変わることで、その繋がりが変化している、それが露わになったという見立てだ。

映画の中にも、法人化・社員化する893を感じさせるシーンがところどころあって、現実の興行界の変化と微妙に輻輳する。

本作の小島は、最後の静かなクライマックスで、「俺のやり方は時代遅れなんかなあ」という言葉を口にする。それは、昭和の時代には確かに社会の一角を成していた人々が、行き場を失って絞り出す嘆きにも聞こえる。

この作品は、表向きには胸のすくアクションと、ちょっとした笑いと、ヒロインの可愛さ健気さとで進行するエンタメ映画には違いないのだが、少し視点をずらしてみると、違うものも見えてくる。

そういう風に私には見えました。

主人公たち世代よりひとつ上の親父たち世代もいい味で関わってくる。彼らは裏で動いて、功利的な能力ばかりを伸ばしてきた若者を、社会に根付く真人間に育てようとする。あるいは、もう取り返しのつかなくなってしまった毒を、容赦なく、あるいは、涙ながらに、力で排除する。その罪は黙って墓まで持っていくのだろう。
かっこよすぎるでしょ。

これ、わかっているおっさん世代が作り手に紛れ込んでいるのは間違いないのだが、そのおかげで陰影のあるいい作品に仕上がったと思います。

テレビ局は自分たちの世界の話だから、わかっていて当然かw

 

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