「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」
芸術家を描いた映画は、もうひとつピンとこない気がして避けることが多いのだけど、この作品はふと観る気になって、そして観てよかった。
主役が現役のダンサー、そしてその友達役は、あろうことか、セルゲイ・ポルーニンその人。そりゃ、バレエを見ているだけでも満足です。実際、踊っているシーンもたっぷりあった。
本作はそれだけでなく、ヌレエフの生い立ちをフラッシュバックしながら、彼の芸術が何に由来しているのかを、同時に見せてくれます。
作中で、「バレエを発明したのはフランスだが、その情熱は常に東からもたらされる」という台詞がフランス人の口から出るとおり、確かに、バレエといえばロシアだが、それはなぜなのか。
単に国家が国威発揚に力を入れているというよりは、むしろ、厳しい自然に対峙し続けてきたロシアの風土、その中でも逆境の多かったヌレエフの生い立ちそのものが、彼の芸術を生み出す土壌だったのではないか、という気もしてくる。
映画の締めくくりは、ヌレエフが亡命を決断して実行する緊迫のシーン。そこで表面化する旧ソ連の束縛も、逆説的だが、彼の自由を指向する芸術を育てたのかもしれない。
ちょっとそんなことを想ったりした作品でした。
ちなみにワタクシは本物のバレエを見たことは1回くらいしかないので誤解なきよう。