「エリカ38」
樹木希林の最初で最後の企画映画で、実際にあった詐欺事件がベース、ということで、まあ見ておくかなと。
いや、浅田美代子ってこんなに上手い女優さんだったんだ。撮影や演出の力もあるだろうけど、詐欺師という感じが色濃く出ていた。それがなにより大きい。
もちろん、実物の詐欺師は、この正反対の空気をまとっているのだろうけど、映画作品としてはこの濃ゆい、いかにもな感じがわかりやすい。
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話自体はどうということもない。我々庶民にはさして関わりもない世界で、騙す人あり、騙される人もありというだけのことだ。
不思議なのは、一見わかりやすそうな詐欺話に、乗ってしまう人が大勢いたという点だろうか。何か高邁な理想を説いているけれど、FACTだけ見れば、配当という形でリターンがありますという投資の話でしかない。契約書も交わさずにまとまった金を渡してしまう感覚が、私にはよくわからない。
金持ちにとっては小さな捨て金なのか、というとそうでもなさそうだ。実際には、MLMと似た階層構造で、少額の資金を薄く広く集めて速し最上川。という図式が被害者役の台詞から垣間見える。
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騙される側の共通点は何かといえば、欲と見栄と言っていいだろう。もっと金が欲しいという欲、閉塞した環境から逃れて自由になりたい欲と、社会貢献している自分という像を結びたい見栄とが、まともな判断を封じ込める。詐欺師はその両方を満たす話を巧みに持ち掛ける。そして、被害者が自分でそれを欲していることを自覚させながらコトを運ぶ。
「私は何も悪くない。あなたがそれを望んだのでしょう。」
とは、終盤の決め台詞だが、これは悪魔の常套句でもある。
詐欺の肝をきちんと捉えた良作wでした。