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June 2019

2019.06.29

「ハッピー・デス・デイ」

死ぬと時間が巻き戻って記憶だけは残る、というと「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を思い出します。「オール~」では知識とスキルを積み重ね、未来を知っている有利を生かして主人公が活躍しますが、本作では、この設定は別の使われ方をします。

決して褒められた性格ではない主人公が、反省して行いを改めるのでーす。と思ったら、それは終わりの方の1回の蘇生だけ。その結論にたどり着くまで、何度も死になおします。途中、むしろ悪い方向にも行ったりしてw。性格の悪さなんてそうそう変えられるものじゃありませんね。
でも、行いを改めようと思ったきっかけが、これがふとしたことだけれど、なかなかよいです。やはり善人との出会いというのは大切ですね。幸運をあなたにも。

まあ、そういうガールミーツボーイな筋書きがあってほっこりするわけです。
「バタフライ・エフェクト」とは違って明るくてパワフルです。

しかしながら、本作の眼目は何といっても、様々なパターンで殺される恐怖を何度も味わうところにあるわけで。刺されたり刺されたり刺されたり殴られたり燃やされたり・・えーっと溺れるとかはなかったかな。他にもあるけど言うと結末のネタバレになるので黙っておきますが。

まあ、そういう趣味の作品です。

こうしてみると、やはり刺されて死ぬのが映画製作上は一番安上がりなんですかねえ。何度も使われてます。派手な爆発で燃やされるのは1回だけ。ちょっとおごってみましたって制作会議で監督が説明してるのが目に浮かびますw

ほっこりあり、恐怖あり、ほかにもいろいろあって、最後はハッピーエンド。コスパのよい作品でした。

* * *

ところで、時間巻き戻しというギミックを使った作品としては、「アバウト・タイム」がとてもよいので、お薦めしておきたいです。

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2019.06.21

「X-MEN: ダーク・フェニックス」

いと高き者ジーン! その御前にひれ伏すがよい!
てな感じのノリで。手が付けられない強さとはこのこと。

ソフィー・ターナー、悪くないけど、ファムケ・ヤンセンの方がわたくしとしては好みでした。表面の落ち着きの下に隠れた不安定さや狂気みたいな二重性を、ヤンセンはうまく出してた。

展開は、世界が滅ぶとかなんとかの前宣伝の割には、比較的小規模な闘いに終始してました。マグニートーが潜水艦持ち上げたり金門橋持ち上げたりしてた過去に比べると地味。今度も変なもの持ち上げてたけど、それを持ち上げる必然性がないぞw

それでも、X-MENの良さである、各々の特異性を生かした目まぐるしいバトルアクションは、いつもどおりの質をキープ。これを見に行っているので、今回も満足です。

* * *


X-MENの面白さは、つまるところサーカスの面白さなんだから。
ミュータンツは芸人。そして看板芸人はいつもマグニートーw

* * *

ストーリーはないようで、実はちゃんとある。お互い敵同士に分かれた二人、チャールズとエリックが、ジーンの暴走を前にして、自らの過ちを認め、赦し、仲直りするのがそれ。

敵対していたときと、共闘するとき、そして最後に友として、それぞれの人物像や空気を、マイケル・ファスベンダーとジェームズ・マカヴォイがはっきり演じ分けています。演出と編集もそれをきちんと組み入れて、見る側が迷いなく感じ取れるようにできてる。護送鉄道の中でファスベンダーが見せた一瞬の表情が、彼の立ち位置の変わり目をはっきり見せていてよかった。

やっぱり上手い役者がやるとそれだけで、ありきたりなストーリーにも深みみたいなものが出る。よいですな。

これでX-MENも一旦終了になるのかどうか。
今後が気になります。

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2019.06.15

「海獣の子供」

アニメっていいよなあ、と実感させてくれる、美しい絵。
海、波、水、光、闇、そういう表現がとてもいい。

お話はちょっとユートピアとかスピリチュアルとか
そういうのが混ざってるけど、まあ許容範囲。

アニミズムを消極的に標榜するワタクシとしては、
認めないというわけにもいかない。

最後の宇宙っぽいところは、年寄には少し厳しい。
リアルから完全に離れてしまうと、
作り手の勝手に見えてしまって醒める。

リアルの襞に潜む空想というのが、一番グッとくるんだが・・

ともあれ、綺麗な絵を見て癒されたい向きには、間違いなくお勧めです。

 

ちょっと追記。

最後の宇宙のところはもちろん、あーつまりあれって気持ちいいしでもなぜか不安が混ざってるしということなんだけど、女はあれをどう見るんだろうね。

 

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「誰もがそれを知っている」

じんわりといい映画。

前宣伝を見ると、家族の秘密みたいな売り込み方で、確かにそれでお話は緊張感を持って進むのだけれど、それ以上に、農園の男の最後の、長年の胸のつかえが取れてさっぱりしたような表情がいい。
以下ネタバレ。

誰でも何かしらの制度的な束縛の中で生きていて、それは今ではあまり口にされなくなった身分というものの影なのだけれど、農村となれば土地の所有権をめぐって、それが多少濃く表れるのだろう。

そのしがらみの中で、この農園主と周囲の人々が、どんな過去を生きてきたかが、ある事件を切っ掛けに少しづつ露わになる。

その感じが、どろどろせずに、かといって突き放しもせず。
同調も批判もせずに、いい塩梅で見せてもらえて、じんわりくる。

理屈と違った生き方の筋かもしれないが、身分違いの恋の始末をつけたこの男の感覚を、覚えておきたい。
そういう気持ちにさせる一本。

話だけ聞くと、少し前の時代の大家族のイメージかと思っても不思議はないけれど、ドローンで婚礼の記念撮影をするシーンを入れて、まぎれもなく現代に通じる話として見せているのが上手いと思いました。

 

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2019.06.09

「エリカ38」

樹木希林の最初で最後の企画映画で、実際にあった詐欺事件がベース、ということで、まあ見ておくかなと。

いや、浅田美代子ってこんなに上手い女優さんだったんだ。撮影や演出の力もあるだろうけど、詐欺師という感じが色濃く出ていた。それがなにより大きい。

もちろん、実物の詐欺師は、この正反対の空気をまとっているのだろうけど、映画作品としてはこの濃ゆい、いかにもな感じがわかりやすい。

* * *

話自体はどうということもない。我々庶民にはさして関わりもない世界で、騙す人あり、騙される人もありというだけのことだ。

不思議なのは、一見わかりやすそうな詐欺話に、乗ってしまう人が大勢いたという点だろうか。何か高邁な理想を説いているけれど、FACTだけ見れば、配当という形でリターンがありますという投資の話でしかない。契約書も交わさずにまとまった金を渡してしまう感覚が、私にはよくわからない。

金持ちにとっては小さな捨て金なのか、というとそうでもなさそうだ。実際には、MLMと似た階層構造で、少額の資金を薄く広く集めて速し最上川。という図式が被害者役の台詞から垣間見える。

* * *

騙される側の共通点は何かといえば、欲と見栄と言っていいだろう。もっと金が欲しいという欲、閉塞した環境から逃れて自由になりたい欲と、社会貢献している自分という像を結びたい見栄とが、まともな判断を封じ込める。詐欺師はその両方を満たす話を巧みに持ち掛ける。そして、被害者が自分でそれを欲していることを自覚させながらコトを運ぶ。

「私は何も悪くない。あなたがそれを望んだのでしょう。」

とは、終盤の決め台詞だが、これは悪魔の常套句でもある。
詐欺の肝をきちんと捉えた良作wでした。

 

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2019.06.01

「プロメア」

いやもう派手。ヴィヴィッドという評を目にするけど、まさにそういう感じ。
そして決めぜりふオンパレード。しかも歌舞伎調。
あっけにとられますw

後半はなぜかロボットアニメに早変わり。珍妙な名前の必殺技の連続で腹の皮よじれるっていうか、よくそんな名前思いつくなっていうか。

まそんな感じで、初めから仕舞いまでジェットコースターアクション。たいへん満足いたしました。ていうか最後のあたりはもうついていけない。w

 

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「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」

芸術家を描いた映画は、もうひとつピンとこない気がして避けることが多いのだけど、この作品はふと観る気になって、そして観てよかった。

主役が現役のダンサー、そしてその友達役は、あろうことか、セルゲイ・ポルーニンその人。そりゃ、バレエを見ているだけでも満足です。実際、踊っているシーンもたっぷりあった。

本作はそれだけでなく、ヌレエフの生い立ちをフラッシュバックしながら、彼の芸術が何に由来しているのかを、同時に見せてくれます。

作中で、「バレエを発明したのはフランスだが、その情熱は常に東からもたらされる」という台詞がフランス人の口から出るとおり、確かに、バレエといえばロシアだが、それはなぜなのか。
単に国家が国威発揚に力を入れているというよりは、むしろ、厳しい自然に対峙し続けてきたロシアの風土、その中でも逆境の多かったヌレエフの生い立ちそのものが、彼の芸術を生み出す土壌だったのではないか、という気もしてくる。

映画の締めくくりは、ヌレエフが亡命を決断して実行する緊迫のシーン。そこで表面化する旧ソ連の束縛も、逆説的だが、彼の自由を指向する芸術を育てたのかもしれない。

ちょっとそんなことを想ったりした作品でした。

ちなみにワタクシは本物のバレエを見たことは1回くらいしかないので誤解なきよう。

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「僕はイエス様が嫌い」

嬉しいこと、悲しいこと、楽しいこと、本当のこと、ちょっといけないこと、そういうものを、こどもたちがひとつひとつ積み重ねていく。その様子を純粋に描いている。演技もなく、演出も目立たないことが、かえって純度を高めていて、背景の純白の雪とあいまって、美しさをもたらしている。

イエス様は、ちょっとしたことなら願いをかなえてくれるのに、肝心の大変なときには姿を現さず、こども心からすれば役立たず、ということになるのだろう。嫌われて当然だ。

それで、ちょっと思い出したことがある。例の池袋の暴走事件、それから川崎の無差別刺殺事件。どちらもまだひと月も経っていない。

そういうことがあると、被害者は憎しみと怒りを誰かにぶつけたくなるだろう。被害者だけでなく、ニュースでそれを見る第三者の我々も同様だ。処罰感情などと呼ばれたりもする。

そうすると、憎しみは輪を描いて増幅されていく。それは果たしていいことなのか。

* * *

イエス様は、だから、そういう場には姿を現さない。現れないことで、憎しみや怒りを自分が引き受ける。他者に、それらの悪感情が向かないように。

赦すとは、たぶんそういうことだ。

この作品は、こどもたちを取り上げているけれど、実は大人にも同じように当てはまる。そういう風に私は観ました。

 

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