「居眠り磐音」
久しぶりに時代劇見るか、という軽い気持ちでいったら、これがなかなかの良作。日本らしい潤いがよく出ている映画だなあという感じ。アメリカ産でこういう感じのものはたぶんあんまり無さそうです。
はじめのうちは、ちょっと時代がかって大仰なお芝居だけど、それはまあ時代劇なんだから仕方がないかなと思っていたら、そのパートは主人公の背景の仕込みで、それに続く後の方が本番でした。
見た目涼やかな優男だが、実は剣の腕は一級。
過去に心の傷を残したまま、憂いと微笑みと共に今日を生きる。
悪に出会えば静かに怒りをたぎらせ、手筋一閃闇を断つ。
そういう感じ。
圧倒的に強いわけではなくて、結構手傷を負ったりするところなんか、保護欲をそそる設定で、女性向けのマーケティングもばっちりです。
江戸と国元との空気の違いがよく描けていて、不思議と江戸が現代に重なる感じがします。
wikipediaを見ると、本作に少しだけ登場する田沼意次の政策は、貨幣経済の振興と商人への課税という重商主義らしい。この映画でも、貨幣経済がお話の筋に深く関わっていて、切り合いとか武士道とかの典型的時代劇とは一線を画している。そういうところも現代的。
笑いあり、剣戟あり、陰謀があって知的な反撃があり、個性的な江戸の町人たちとの交流あり、言うことない進行です。
そのうえで、最後のエピソードが、おのろけと見せかけてじんわり泣かせる展開。なんだそれ。出来過ぎだろう。わずか半年の間にw
武士で用心棒だけれど、どちらかというと探偵のような役回りの、松坂桃李の名演でした。桃李という名前の由来も、作中の磐音の佇まいとよく響き合う。