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2019.05.03

「ROMA」

NETFLIXのコンテンツを映画館でも上映しているみたいです。
そういうケースがこれから増えていくのでしょうか。

作品は、淡々としたモノクロ映像の連なりです。刺激を求めに行くと退屈かもしれません。けれども、作品の空気を吸って、その世界に波長を合わせていけば、舞台となった家庭に起きる様々な波乱と平穏の中に、登場人物たちの息遣いを感じ取ることができるかもしれません。

私的には、この作品から戦後昭和を強く連想しました。

映画の始まりのあたりで、舞台となる屋敷の室内に1970年のメキシコワールドカップのポスターらしきものが張られていて、作品の時代背景を簡潔に示しています。

wikipediaを見ると、「1950年代から1970年代までの間、他のラテンアメリカ諸国ではクーデターが頻発し、軍事独裁政権が数多く誕生していったが、メキシコは文民統治体制を維持しながら「メキシコの奇跡」と呼ばれる高度経済成長を達成、1968年にはラテンアメリカ地域初の近代オリンピックであるメキシコシティオリンピック を開催している。」とあるので、1964年の東京オリンピックの頃の日本のような状況だったのかもしれません。

実際、とてもよく似ていて、街の風景のあれこれが懐かしく感じられました。焼き芋屋の屋台のようなのとか、軍楽隊のパレード、子供たちが駆けていく街並みの様子、人々の密度など。建築やデザインの様式はまるで異なるのですが、空気感がそっくりです。

加えて、お話の中心にいる家政婦がアメリカ先住民系の顔立ちなので、猶更です。口数は少ないながらも、思いは深いところも東洋・・というか非西洋的で、その心の機微がこの映画をかたちづくっています。

彼女の恋人の男も東洋系の顔で、カタコトの日本語を話しながら武術の稽古などを披露していて、作り手の意識の中に日本という国があることが窺えます。この男が、一見勇ましそうなのに、実は単なる粗暴な臆病者で、主人公を苦しめる役どころなのが、日本人としては少し残念。


ふた昔くらい前の、よい時代のおしまい辺りの感じがよく出ている、私にとっては懐かしい感じのする良作でした。

* * *

とまあ、自分としてはこの程度のぼんやりした感想なのですが、もうちょっと時代背景など含めた解像度の高い解説がありましたので、リンクを載せておきます。
https://acueducto.jp/blog/espanol/roma-de-alfonso-cuaron/

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