« 「愛がなんだ」 | Main | 「僕たちは希望という名の列車に乗った」 »

2019.05.25

「空母いぶき」

こういうミリタリーものは、米軍主役でやってくれれば喜んで見るけど、自衛隊主役となるとデリケートな感じがして、ひよりなワタクシは、どちらかというと敬遠してきたわけです。

だけどまあ、かわぐちかいじ原作だというし、ウヨ味はなさそうなので見てみましたら、案外悪くない出来です。

原作では敵は中国という設定だそうだけど、映画は当然ちょっと変えていて、架空の新興国になっています。後ろで糸を引いている大国があるwということにして。

で、実際に武力衝突が起きたらどういうポリシーが絡んできて、現場では具体的にどういう線引きがありうるのか、を話の筋として進んでいきます。対艦ミサイルとか迎撃ミサイルが飛びかう緊迫するシーンもたっぷりあり、エンタメ要素も十分。派手さは少なくて、軍事を仕事として遂行していく感じです。そういうの、割と好み。軍オタさんたちには単なるフィクションに見えるのかもしれませんが。

作戦目標と人命のどちらを優先するか、とか、民間人、自衛隊員、敵軍兵士の人命をどう扱うかとかを戦闘シーンと交互に織り交ぜながら、緩急をつくっています。そこに、専守防衛の具体的なありようも入れ込んでいるのがうまい。

話の終わらせ方は、ちょっと理想的過ぎて笑えますが、それくらいが映画としてはいいところなんじゃないでしょうか。勇ましい向きには物足りないかもしれませんねw

この作品の意図は、もちろん現場の葛藤をなるべく具体的に描くことにあると思いますが、それと同じくらい、政治についても触れています。はじめはひ弱な平和主義者に見えた総理大臣が、強硬派の閣僚に突き上げられることで、かえって平和の重みと政治家としての使命に目覚めていく様子が、たいへん印象的です。

佐藤浩市、すばらしい役者ですね。

|

« 「愛がなんだ」 | Main | 「僕たちは希望という名の列車に乗った」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事