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May 2019

2019.05.31

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」

・・・これ、凄まじいわ。

心のどこかで、まあどうせ怪獣大行進だよね、と侮ってました。
とんでもない。
心臓弱い人は、ちょっと気を付けといた方がいいです。
まあ、確かに大怪獣総出演なんだけどね。

いくつもヤマがあって、そしてタニがそれぞれに意味があり、この稀代の題材の歴史へのリスペクトがあって。

そして次のヤマではエスカレートしていて。それが何回も繰り返し。
これがハリウッドの実力か! て感じです。

思えば、ハリウッドの技術は、これまで十分発揮される舞台を持てなかったのではないか。
エイリアン? プレデター? 小さい小さい。怖いけどそんだけ。
トランスフォーマー? メカメカしくてイマイチ同調しづらい。
巨大宇宙船がでてくるあれとかそれとか? 大きいけどリアルな五感に訴えるものがない。
巨大な昆虫が雲霞のように攻めてくるあれとか? いや、気持ち悪さの方が先に立つ。

それに比べてこのゴジラの、圧倒的な血と肉のたぎり、巨神と悪鬼が一体になった存在感はどうだ。
そう。善と悪、道理と不条理がひとつにあって、われわれ卑小な人間はその向く先を推し量ること叶わない。それがゴジラなんですよ。自然そのものなんです。すっかり忘れてました。

凄い。それ以外言葉がありません。

ハリウッドの技術は、その実力を存分に揮える対象をついに見つけましたね。
これからも続きそうだけど、最初にこんなものを見せられてしまっては、後が続くのか心配です。期待してますが。

ま、ちょっと煽り過ぎかなw

スタッフロールの中に怪獣たちの名前を見つけて、その配役が HIM SELF になっているのを見て、やっと笑いを取り戻せました。

* * *

落ち着いて考えてみます。

シン・ゴジラが、地面に向けて熱い毒の息を滔々と吐き出し鉄とガラスの都市を足元から溶かしていく様は、諸行無常の諦念を感じさせました。とても日本的な情感のあるゴジラだったと思います。あれも素晴らしかった。
それに対して、本作のゴジラはやられてもやられても立ち上がり、最初はねぼけまなこでも強いなくらいだったのが、最後は悪鬼の形相剥き出しで無限のパワー全開、容赦のない破壊をもたらしました。とても米国的だと思います。
その様子が、何十年も前の何を思い出させるか、ここでは言わずにおきたいと思います。

ただ、怪獣たちの激闘の背景に、普通の音楽に混ざって念仏が流れていたのには驚きました。これを作った米国人たちは、日本というものをよく理解している気がします。対して我々は、彼らをどの程度理解しているでしょうか。

とても印象に残るあれこれがちりばめられた、スーパー娯楽作と言っていいと思います。

現場からは以上です。

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2019.05.26

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

これは素晴らしい作品。

社会主義の皮を被った権威主義と自由主義とが衝突する、よくある筋書なのですが、そこに世代間の葛藤を重ねています。

戦争と革命に塗りつぶされた親たちの世代の無念、にもかかわらずそれを子供たちにも強いる現体制の不条理、それに反抗する中で学んでいく子供たち世代の葛藤や希望、仲間との連帯が、鮮やかに描かれています。

子供は、子供たちだけで次の世の中を作っていく。
親はただ見守り、時には古き悪しきもの、憎悪や狂信の過去から子を護る盾になり、若者たちを巣立たせていく。
そういう理を示してくれる作品です。

いろいろ触れたい細部はあるのですが、それをすると作品の味わいを損なうので、感想はこれだけにしておきます。

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2019.05.25

「空母いぶき」

こういうミリタリーものは、米軍主役でやってくれれば喜んで見るけど、自衛隊主役となるとデリケートな感じがして、ひよりなワタクシは、どちらかというと敬遠してきたわけです。

だけどまあ、かわぐちかいじ原作だというし、ウヨ味はなさそうなので見てみましたら、案外悪くない出来です。

原作では敵は中国という設定だそうだけど、映画は当然ちょっと変えていて、架空の新興国になっています。後ろで糸を引いている大国があるwということにして。

で、実際に武力衝突が起きたらどういうポリシーが絡んできて、現場では具体的にどういう線引きがありうるのか、を話の筋として進んでいきます。対艦ミサイルとか迎撃ミサイルが飛びかう緊迫するシーンもたっぷりあり、エンタメ要素も十分。派手さは少なくて、軍事を仕事として遂行していく感じです。そういうの、割と好み。軍オタさんたちには単なるフィクションに見えるのかもしれませんが。

作戦目標と人命のどちらを優先するか、とか、民間人、自衛隊員、敵軍兵士の人命をどう扱うかとかを戦闘シーンと交互に織り交ぜながら、緩急をつくっています。そこに、専守防衛の具体的なありようも入れ込んでいるのがうまい。

話の終わらせ方は、ちょっと理想的過ぎて笑えますが、それくらいが映画としてはいいところなんじゃないでしょうか。勇ましい向きには物足りないかもしれませんねw

この作品の意図は、もちろん現場の葛藤をなるべく具体的に描くことにあると思いますが、それと同じくらい、政治についても触れています。はじめはひ弱な平和主義者に見えた総理大臣が、強硬派の閣僚に突き上げられることで、かえって平和の重みと政治家としての使命に目覚めていく様子が、たいへん印象的です。

佐藤浩市、すばらしい役者ですね。

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2019.05.19

「愛がなんだ」

公開されてから早ひと月、人気がじわじわ広がっているらしい。見てみればなるほどと頷ける。日本の映画も捨てたもんじゃない。

微妙、と、曖昧、は、似ているようで結構違う。
曖昧は文字通りあいまいなのだけれど、微妙というのは、びみょーだけれどはっきりしているものなのだ。

この映画は、はじめはあいまいだった山田テルコの中の何か、好き、とかが、もっと微妙だけれどはっきりしている何かとして自覚されていくのを描いている。ように見えた。

その何か、というのに当てはまる言葉を思いつかない。
題名自体、愛がなんだ、と言っているように、たぶん愛とかいうものではない。宣伝文句は、恋、だと言っている。宣伝だから仕方がない。

執着という台詞が作中にも出てきているが、そうなんだろうか。

テルコにとって、田中マモルは、自分というものの一部になったのかもしれない。恋が叶わないとわかったときに、普通、人はそれを思い出として仕舞い込む。あるいは忘れる、あるいは成就につなげる行動を起こす。はたまた、破滅的な行動に出てとにかく終わらせようとする。

作中では、テルコの周囲の人たちがそれぞれの選択を見せる。しかしテルコはそのどれも選ばない。

微妙な感じがあって、それがそのまま固定化していくような、むずがゆい感触が残った。

そういうこともあるのかもしれない。ないかもしれないがあるかもしれないものを、巧みな話の運びとともに見せてくれる点で、この作品は秀作です。

 

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2019.05.17

「居眠り磐音」

久しぶりに時代劇見るか、という軽い気持ちでいったら、これがなかなかの良作。日本らしい潤いがよく出ている映画だなあという感じ。アメリカ産でこういう感じのものはたぶんあんまり無さそうです。

はじめのうちは、ちょっと時代がかって大仰なお芝居だけど、それはまあ時代劇なんだから仕方がないかなと思っていたら、そのパートは主人公の背景の仕込みで、それに続く後の方が本番でした。

見た目涼やかな優男だが、実は剣の腕は一級。
過去に心の傷を残したまま、憂いと微笑みと共に今日を生きる。
悪に出会えば静かに怒りをたぎらせ、手筋一閃闇を断つ。
そういう感じ。

圧倒的に強いわけではなくて、結構手傷を負ったりするところなんか、保護欲をそそる設定で、女性向けのマーケティングもばっちりです。

江戸と国元との空気の違いがよく描けていて、不思議と江戸が現代に重なる感じがします。

wikipediaを見ると、本作に少しだけ登場する田沼意次の政策は、貨幣経済の振興と商人への課税という重商主義らしい。この映画でも、貨幣経済がお話の筋に深く関わっていて、切り合いとか武士道とかの典型的時代劇とは一線を画している。そういうところも現代的。

笑いあり、剣戟あり、陰謀があって知的な反撃があり、個性的な江戸の町人たちとの交流あり、言うことない進行です。

そのうえで、最後のエピソードが、おのろけと見せかけてじんわり泣かせる展開。なんだそれ。出来過ぎだろう。わずか半年の間にw


武士で用心棒だけれど、どちらかというと探偵のような役回りの、松坂桃李の名演でした。桃李という名前の由来も、作中の磐音の佇まいとよく響き合う。

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2019.05.12

「RBG 最強の85才」

一言でいうと、生きる勇気をもらえる映画。そういう言い方は安易な感じがして好きじゃないのだけれど、この作品については素直にそう言える。というより、この人自身から、というほうが正確か。

もちろん、周囲にも恵まれたのだろう。とりわけ生涯連れ添った夫は、彼女自身が言う通り、その時代には稀なリベラルな感覚を持っていたうえに、生真面目な彼女の欠点を補うユーモアのある人だったようだ。それに、彼女に匹敵する知性も。

このところ米国の最高裁判事は、保守派が優勢に転じたうえに、法の下の平等を、右や左といった主義や思想の下に置こうとする空気が強まっているそうで、当分、辛い立場だろうけれど、じっと風向きが変わるのを待っているだろう。それは彼女の存命中にはこないかもしれないが、次を担う人が続々出ることを祈りたい。

 

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2019.05.11

「オーヴァーロード」

まあ、エイブラムスは、物語の人ではなく映像の人という感じだから、これでいいのだろう。あ、監督さんは別の人なのか。。

映像で恐怖や不安や不気味さ、そして暴力を見せる映画。もちろん、それらに対置されるものもある。物語はあまりない。

主役の黒人俳優さんの、恐怖に見開かれた瞳が目立つ。暗闇に肌の色が溶け込んで、ただ目だけが不安と恐怖を訴えているのが効果的。それが、精神に過大な負荷を掛けられ、だんだん目が据わってきて、エピローグでは一皮むけた感じになっている。俳優さんの演技が割とよかった。

ほかにも、人の二面性を表すカットがところどころで見られて、もしかするとそれを狙っているのかもしれない。俳優さんたちがそれぞれに、明るい面の表情と、過負荷を掛けられたときの暗い面の表情をはっきり作り分けていた。

こういうのもある種のエンタテイメントではありますわね。

【追記】

”Overload”は、もちろん過負荷という意味だけど、この映画の背景になっている、第二次大戦の連合軍の作戦名だそうで。全然知りませんでしたよ(汗

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2019.05.10

「ザ・フォーリナー 復讐者」

パスしようと思っていたのだが、見てよかった。
ジャッキーチェン、ピアース・ブロスナン、どちらも素晴らしい。

復讐譚でありながら、感情の泥沼を見せずに、淡々と映し出していく。爆発、銃撃、格闘、全て騒々しいのだが、その底流にある静寂は何だろう。プロフェッショナルは泣き喚いたりしない。ただ目的に向かってその技を淡々と繰り出していく。
その静かさゆえに、怒りの深さが伝わってくる。苦味のある大人の作品に仕上がっている。

ジャッキー・チェンの映画は実はほとんど見ていない。少林寺系のを何本か見たくらいで、他はどれも似たような作品に思えたからだが、もっと見ておけばよかっただろうか。

ただ、「ラスト・ソルジャー」は印象に残っている。あの映画の最後に、チェン演じる主人公は意外な行動に出るのだが、その感触は、本作の感じと似ているかもしれない。ジャッキー・チェンはアクションコメディ俳優として有名になったのだが、笑いの中に常に怒りを潜ませている存在なのだと思う。だからこそ、本作のような味のある作品を作れるのだろう。

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2019.05.04

「名探偵ピカチュウ」

ポケモンが街角のあちこちに居るシュールな光景は惹かれるものがあります。
ポケGOなどで見たことのあるポケモンが次々現れるのは、普通の映画では得られない面白さです。

一応謎解きのストーリーになっていて、適度にポケモンバトルもちりばめられており、各ポケモンの特性を生かした闘いが繰り広げられるのは、ゲームでもお馴染みの楽しさです。やっぱりコイキング→ギャラドスが最初のハイライトでしょうかね(笑)

本格的なARゲームがそろそろ世に出てくる頃合いで、ひょっとするとこの映画はその先触れのような位置づけでしょうか。ハリーポッターの世界観を使ったゲームの製作が進行中ということで、どの程度リアルとマージされるのか、興味深く見守りたいと思います。

ビル・ナイを久しぶりに見られたのもよかったし、主人公の父親役は最後に現れるのですが・・意外なようなぴったりのような、それなりの大物俳優です。

ちょっと時間が余っているなら、見てもいいかなというくらいで。

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2019.05.03

「ROMA」

NETFLIXのコンテンツを映画館でも上映しているみたいです。
そういうケースがこれから増えていくのでしょうか。

作品は、淡々としたモノクロ映像の連なりです。刺激を求めに行くと退屈かもしれません。けれども、作品の空気を吸って、その世界に波長を合わせていけば、舞台となった家庭に起きる様々な波乱と平穏の中に、登場人物たちの息遣いを感じ取ることができるかもしれません。

私的には、この作品から戦後昭和を強く連想しました。

映画の始まりのあたりで、舞台となる屋敷の室内に1970年のメキシコワールドカップのポスターらしきものが張られていて、作品の時代背景を簡潔に示しています。

wikipediaを見ると、「1950年代から1970年代までの間、他のラテンアメリカ諸国ではクーデターが頻発し、軍事独裁政権が数多く誕生していったが、メキシコは文民統治体制を維持しながら「メキシコの奇跡」と呼ばれる高度経済成長を達成、1968年にはラテンアメリカ地域初の近代オリンピックであるメキシコシティオリンピック を開催している。」とあるので、1964年の東京オリンピックの頃の日本のような状況だったのかもしれません。

実際、とてもよく似ていて、街の風景のあれこれが懐かしく感じられました。焼き芋屋の屋台のようなのとか、軍楽隊のパレード、子供たちが駆けていく街並みの様子、人々の密度など。建築やデザインの様式はまるで異なるのですが、空気感がそっくりです。

加えて、お話の中心にいる家政婦がアメリカ先住民系の顔立ちなので、猶更です。口数は少ないながらも、思いは深いところも東洋・・というか非西洋的で、その心の機微がこの映画をかたちづくっています。

彼女の恋人の男も東洋系の顔で、カタコトの日本語を話しながら武術の稽古などを披露していて、作り手の意識の中に日本という国があることが窺えます。この男が、一見勇ましそうなのに、実は単なる粗暴な臆病者で、主人公を苦しめる役どころなのが、日本人としては少し残念。


ふた昔くらい前の、よい時代のおしまい辺りの感じがよく出ている、私にとっては懐かしい感じのする良作でした。

* * *

とまあ、自分としてはこの程度のぼんやりした感想なのですが、もうちょっと時代背景など含めた解像度の高い解説がありましたので、リンクを載せておきます。
https://acueducto.jp/blog/espanol/roma-de-alfonso-cuaron/

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2019.05.01

「THE GUILTY/ギルティ」

これは驚いた。

電話を取るときというのは、脳が普段とは違うモードになっているのは間違いないだろう。この作品はそのモードを80分間観客に強いる実験色の強い作品だ。

同様の作品は過去にもあった。「フォーンブース」然り、「オン・ザ・ハイウェイ」然り。けれど、本作はとりわけ緊張感と密度が高い。

はじめはそれに気を取られているが、話が進むうちに驚きの展開が待っている。これはもう脚本の勝利というしかない。脱帽です。

すべてが終わったときはじめて、映画のタイトルの意味が、見た者の心を深く抉ります。

決してネタバレはできませんが、これはまたすごい作品を観たなという感じです。

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「キングダム」

原作が人気漫画とあって、中身は申し分のない面白さ。
そのうえ、映画の上映時間に合わせて、高密度に作り直している。
原作者も脚本に加わって完成度も上がっていて、文句なく楽しめます。

欲を言えば、話の展開があまりに定型なので、以前見たことがあるような気がしてくるところくらい。でも裏を返せば盤石の展開で安心して見ていられるともいえるので、ブロックバスター狙いとしてはこれでいい。TV局が絡むと時々出てしまう嫌らしさもなく好感が持てます。

ところで、やはり一番の見どころといえば、大沢たかお演じる大将軍が、ここ一番というところで巨大な青龍刀を一振りしたときにちらりと見えた脇がしっかりお手入れしてあったところでしょうか。そんなところまでウケ狙ってるのかということで笑えました。

お値段以上の価値はあるかなという一本。

 

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