「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」
私が子供のころは、新聞を中心としたマスメディアは世間から一定の信頼を得ていたと思います。多少の忖度はあったにしても、自分たちは権力の監視と批判のために活動しているという意識はあったでしょう。
昨今はどうかというと、残念というしかありません。ひょっとすると元からそうだったのが最近は簡単に見透かされるようになったというだけのことかもしれないですけどね。
で、我々は、自分たちのダメさ加減は棚に上げて、自由と民主主義の本場アメリカには、メディア、というかジャーナリズムの真髄を体現したような企業、人、制度があると信じてきたと思うわけです。
本作は、その真髄の片鱗を確かに見せてくれてはいます。ただし、片鱗の無力さ、発動の遅さと共に、ではありますが。
この映画を見てわかることは、本場アメリカでさえ、政府が本気でプロバガンダを始めたら、民間のジャーナリズムはなかなか抵抗はできないものだという事実です。ニューヨークタイムズにせよワシントンポストにせよ、その点ではこちらのメディアと大差ない。頼りになるのはインサイダーの良心だけ。日本ではそれも影が薄そうです。
端的に言うとジャーナリズムの弱体化は民主主義の本物の危機のはずなのですが、もはやそんな警鐘も聞こえてこなくなりつつある今日この頃です。
わしらは一体これからどういう世の中に突入していくのでしょうかね。
お先真っ暗です。w
とはいえ、あの馬鹿話に、欧州各国はのせられなかったのは救いといえばそうかもしれません。ブレアは賢い人だと思っていたけれど、ちょっと残念でしたね。
反骨記者の若手の一人の妻役をミラ・ジョヴォビッチが演じていて、おっと思ったのが、本作の収穫でしょうか。台詞の中で、"patriot"と"nationalist"を使い分けていたのが今日のお勉強です。