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2019.03.22

「ブラック・クランズマン」

”BLACK POWER! BLACK POWER!”
”WHITE POWER! WHITE POWER!”
なんだおまえら実は仲いいんじゃないの? と思うくらい、パターンは似ている。

 

タイトルの「ブラック・クラン」には、そういう黒人側の部族的団結みたいな意味があるのかどうなのか。一方の過激な差別意識が、もう一方を刺激して、過激さを呼び覚ましているところはありそうだ。循環しながら拡大する憎悪。

 

本作は、それぞれのクランの人々の考えや行動を見せている。KKKに比べて黒人の方が理性的かというと、必ずしもそうでもない。学生はむしろ原理主義的で、味方につけたほうがいいはずの警察を露骨に敵視していたりする。もちろん、その背後にはいくつもの嫌な経験があるわけで、それも描写されている。

 

コロラドスプリングスというと、米国中部で保守の強そうな土地だが、本作の警察の内部では、人種差別は少ない。一部そういう人もいたが、お話の最後に微罪で逮捕されている。

 

いろいろ思うところはあっても、剥き出しの憎悪で行動までするような人は少数だ。黒人に同情的な多くの異民族出身者が居て、小数派のWASPの暴走を抑えている感じ。

 

それでも、おしまいに警察沙汰になる事件が起きて、そのときの一般の警官の反応などを見ると、黒人の方が犯罪者だろうという先入観が窺える。

 

WASPの議員さんがおちょくられ役で出てくるのだが、彼の「ただ分離したいだけ」という主張は、中道にも受け入れられることを狙った賢い主張なのだが、行動にはやはり相手への嫌悪が現れていて、それ自体が対立の元だという点を隠蔽してしまう。

 

この作品に結論はないと思うけれど、KKKの中での微差として穏健派と過激派がいたり、黒人以上にユダヤ人を敵視している人がいたり、主張よりも出世の道具として団体のリーダーを務めているような人もいたりで、いろいろなんだなということが、見えるようになっていた。

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