「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」
原題は「Mary Queen of Scots」。親しみを込めてメアリーを呼ぶ言葉だそうで、確かにメアリーの方が生き生きと描かれている。でも、女王というものの悲哀を共有する「ふたり」に焦点を当てた邦題も悪くない。
特に、終盤の秘密の会合での二人の掛け合いは圧巻。「私はスチュアート」と、自らの血筋の高さを昂然と言い放つメアリーに対して、庶子の出であるエリザベスは、素直にその美しさ、大胆さを認めながら、最後に、それがあなたの命取りだと、静かに跳ね返す。
息をのむような緊張。悲しみと憂いを帯びた対話の場面。素晴らしいです。
エリザベス1世は、メアリーが持ち合わせている、今なら文化資産とでも言うようなものの価値を、大いに認めていたのではないか。亡命後18年もの間、メアリーの処刑を保留して、好きに振舞わせていたらしいと聞くと、そんな風にも思えてくる。
それに、エリザべスは自分の跡目をメアリーの子に継がせてもいる。それ以外に選択肢はなかったということかもしれないが、大陸の強国と対等に戦うには、血筋の持つ力も無駄にしないしたたかさがあったのかもしれない。
英国が世界帝国にのし上がっていく黎明期に、あの国のかたちに大きな影響を与えたかもしれない、二人の女王の時代の鮮やかなお話でした。