「サスペリア」
昔のホラー映画のリメイクだそう。ジェシカ・ハーパーなんていう女優さんが、年月を経て再登板してるみたい。
まあ、そういう蘊蓄は忘れて、単純に映画作品として見てみると、途中まではひどく難解。特に、老博士と舞踊団とがどういう風につながるのかがわからなくて、いまいちのめり込めない。
ところが、舞踊団の公演に掛かる作品名が「民族」だということ、老博士の生き別れの妻のこと、ラジオから流れてくる時代背景、そういうものから、じわじわと作品の意図が見えてくる。
これは欧州的には、とてもオーソドックスなテーマの映画なのだ。
宗教や、民族や、共同幻想や、王朝や、差別や、そういったものと悪戦苦闘し続けてきた大陸欧州の人間なら、これは腹に落ちる話なのだろう。島国の人間である私には、頭でわかっても、感覚的には難しい。
主不在の間に跋扈する小悪どもを、やってきてなぎ倒すのが、米国娘だということや、その娘を生みの母は罪だと思っていることなどは、どう受け止めるべきなのだろうかと、しばし考える。確かに米国は理念によってかたちづくられた人工国家だが、内陸には、宗教に依拠した大勢の人たちが社会の中心に相変わらず居る。
オハイオの生みの母からすれば、そうした人の手に成る伝統を破壊するかもしれない、もっと原初の荒々しい力を備えた娘は、罪でしかないのだろうか。
いや、ちと考えすぎですかね。でもそういう風に私は観ました。