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2019.01.09

「ANON」

映像全体がスタイリッシュでかっこいい。「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督作品ということで、満員大入り。

ガタカも本作も、色調抑え目のストイックな感じが全編に漲っていてよい味わいです。この監督、「ターミナル」も手掛けているので、必ずしもいつもストイックでスタイリッシュな映像ばかりというわけでもなさそう。芸の幅が広いんでしょうかね。


さて、「視覚をハックされる」という表現は、我々日本人は攻殻機動隊でお馴染みだけれど、いざ映像としてみせられると、なかなか新鮮です。ビデオゲームの一人称視点で、他人の目から自分が見えている、という状況下で、銃を向けられて犠牲者が恐怖でパニックを起こす様子が、真に迫っています。

データ検索は、視線や光彩のわずかな動きで制御して、出力は3Dのベクトル画みたいな簡素で高速な印象を与える像で、これもセンスいい。


お話としては、記憶と記録の共存というテーマが興味深い。記憶は消すことができないが、記録は消したり改竄できてしまう。すべての記録が電子化された世界で、ハッキングによって消された記録と、生身の記憶とのギャップからくるストレスが、物語を駆動する。

記憶は消すことができないから、人のアイデンティティは失われない、はずなのだが、全面的に依存していた記録が消えてしまうと、いいようのない不安や悲哀が頭をもたげてくる。今だって、例えばアルバムを捨てられないということは、ありますよね。まあ、そういう感じ。

もうひとつのテーマは、お馴染みプライバシー。この作品世界では、プライバシーは不道徳なもの、良くないものと考えられていて、犯人はそれを嫌って、ハックを仕掛ける。まあ、ありがちといえばそう。

プライバシーの闇のなかから、ぬっと現れて犯行に及んだあと、記録を消去することで証拠隠滅し、また影の中へすっと隠れてしまう。そういうステルスな存在の、不気味さと人間らしさをともに掬い上げたような作品でした。

自分でも、まとまりのない感想だなとは思いますですはい。

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