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2018.12.01

「イット・カムズ・アット・ナイト」

画像的な怖さはこの作品にはありません。代わりに、心の深みに傷を負わせるような切っ先を隠しています。

まあ、ワタクシは自慢じゃないけど鈍いので、それを横目で見て深刻さをやり過ごすわけですが(汗

* * *

「外には恐怖、中には狂気」という宣伝コピーはこの作品の本質をうまく表している。

我々には大なり小なりこの作品の登場人物たちのような、保守的で自己中心的なところがあって、生存本能なのだからまあ仕方がない。

仕方がないことを言い訳に行き過ぎると、ここでいうところの、中には狂気ということになってしまう。なにごとも程度問題ではありまする。

そうした基本的な世界認識をおさらいした上で、この作品が描いているものをもう少しよく見ると、外への恐怖はまあいいとして、中にあるものは、狂気というのとは少し違う微妙さがあることに気付く。

苛烈な現実に対処するための理性的な姿勢。それは自分たちの生存のための正しい方策であって、称賛されこそすれ非難される謂れはないはずだ。

はずなのだが・・・

そこにある、何とも言えない、非人間的なという指弾の空気。
それを痛いほどわかっているけれども、誰かが手を汚さなければならないという、やるせなさ。

そういうものが、最後の、夫婦二人だけになってしまった彼らの間に、無力感と共に漂っていなかっただろうか。

一家の柱である彼とその妻を、非人間的と感じる我々の意識は、では、人間的というのは、自らを滅ぼしかねない愚かしさであるということを、認めるのだろうか。

やっかいですね。
まあ、そんなことで悩めるからこそ、我々は人間なのですが。

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