「テルマ」
表面的には、何か超人的な力を持った少女が、大人になる過程でそれを自覚し、普通人との葛藤を味わいながらもその封印を解くという、カルトっぽい映画だが、そういう基本線に、いろいろな要素を絡めている。
監督インタビューでは、そう取ってほしくないと言っているけれど、そうはいってもここには、父親という抑圧的な存在との葛藤が表れていることは否定できない。エンディングはその解決だ。いや解決と言えるのか?
そのあたりの匙加減が微妙なので、ハッピーエンドとも、ダークなエンディングともとれそうな仕上がりになっている。「イエスはサタン」という作中の台詞のままに。
それだけの力があるなら、幼子も父親も、同性の恋人と同様に元に戻せるだろうけれど、そうしないところに、我々見る側は他人による支配の暗黒面を感じ取る。これがハッピーエンディングというのは、私には少し受け容れ難いが、どうなんでしょうかね。
何にせよ、キリスト教という一神教の強い背骨があったうえでの、二元論的な世界観ではありました。その時点でこの作り手は既に異端ではあるわけです。