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2018.07.01

「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」

これが米国であまり受けなかった理由はよくわかる。神話ではないからだ。

「スター・ウォーズ」は製作者も言うように、空想異世界の神話を目指していて、その点で成功している。本作には、その空気はほとんどない。だから、このシリーズは神話でなければならないと刷り込まれているスターウォーズ愛に溢れたファン層には、これは違うと受け止められても仕方がない。

しかし一方で、「スター・ウォーズ」には、SciFi冒険活劇というもうひとつの柱がある。神話的空気だけだったらこれほど世界中で受け入れられることはなかっただろう。本作は、そこを正しく受け継いで、はるかに超えている。単にCG映像技術だけでなく、俳優の動きや演出の点でも一級だろう。まあヒーロー効果の嘘臭さだけは、お約束だから仕方がない(笑)。

そしてハン・ソロというキャラクタ。少年の純情と大人の狡猾がないまぜになった魅力的なキャラクタが、本作では生き生きと描かれている。彼の欠点である戦略の欠如と一緒に。

そう、戦略の欠如こそが実は、本作、あるいは類似の数多の作品の最大の魅力なのかもしれない。行き当たりばったり出たとこ勝負の愉快痛快な生き様。それが破天荒な展開の末にう・ま・く・い・っ・て・し・ま・う。本作は、現実にはあり得ないストーリーを描くという、娯楽作品の基本を忠実に踏んでいるのだ。素晴らしい。

ハン・ソロの数々の欠点を補う相棒役もぴったりはまっている。チューバッカはもちろんだが、ベケットとキーラもいい味。ベケットの方は、若いソロの未来の姿のひとつを示しているし、キーラの方は、ソロに足りない大人の部分を表している。

彼女から見れば、ソロは、世の現実も生き延びる戦略も知らないガキだ。男の援けなど必要とせず自力で自分の地位を築いてきた。にも拘わらずソロの奔放に惹かれている。そこに生まれる葛藤と悲哀こそが、本作の真髄と言っていいでしょう。
女って大人だなあ。


スターウォーズという枠に拘らず、素直に楽しめる一級品でした。

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