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2018.05.11

「サバービコン 仮面を被った街」

まじめで怖い。何が怖いって、大人しそうで口数も少ない普通の人間が腹の底に溜め込んでいる黒いものが。

見始めたうちは、この男は途中で改心するのかと思っていた。そういう大人しい、気の弱い人物に見えたのだ。

マフィアにゆすられているうちは可愛かった。ゆすりの種になるような悪事に手を染めてはいても、それでも普通の、ただ心が少し弱い人間が道を誤っただけに見えた。作り手も意図してそう見せている。

ところが話が一歩進むごとに、男の黒い部分がひとまわり膨れて、次第に変貌していく。マフィアに脅される立場から、マフィアも凌ぐ真正の悪を顕わにしてくる。

最後の段階ではまさに悪鬼。そこまでどす黒くなれるのか。

人相が次第に変わってくれれば、むしろわかりやすい悪役で安心するのだが、この男は、外見があまり変わらないまま黒さと異常さが露呈してくるところが、怖さを際立たせてくる。


何が彼をそこまでにさせたのか。
保守性と見栄。というのが一番近いだろうか。

閉じたメンバーシップの中で共有されている、成功者とか、いい人とか、あるべき基準とかに、無理に自分を合わせようとする見栄。

同時並行で次第にエスカレートする、隣家の黒人家族への町民の嫌がらせが、住人の偏狭なメンバーシップを浮き彫りにしていて、主人公の男のどす黒さの拡大と歩調を合わせている。これは怖い。

そんな中で、少年の正直さ、人が生まれつき持っている善性に救いが見える。

この作品が何を象徴しているかは、言う必要もないだろう。ジョージ・クルーニー、近頃のアメリカ社会に対して、かなり頭に来てるな、ということがよく伝わってきました。

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