「ジェイン・ジェイコブズ ―ニューヨーク都市計画革命―」
近代的な都市計画に対して市民的な視点から反対運動を主導した人のお話。
高速道路を既存の都市内部に貫通させることや、低層密集住宅を取り壊して高層に建て替える際に公共空間を作らないことなどを、強く批判し、いくつかの計画を撤回に追い込んだ。
映画はその過程を、当時の映像記録と現代の都市計画に関わる人々の証言などでまとめている。不動産開発王を悪者に見せるための多少の取捨選択はあるだろう。
完全な計画などというものはないから、高速道路そのものが悪だというのもどうかと思うけれど、あれらがヒューマンスケールな街の景観や生活環境に悪い影響を及ぼすことについては、まあ疑いないと今では普通に言うことが出来そうだ。
そうした生活者視点というものが軽視どころか無視されていた時代に、声を上げてくれた人たちのお陰で、現代の我々は少しはましな環境で暮らせている。ありがたいですな。
この種のことはたぶん、密度とスケール感に関する程度問題だ。輝ける都市を提唱したコルビジェにしてからが、実際の不動産開発の事例を見て、これでは建物の間隔が狭すぎると言っていたのではなかったか。いや、別の近代主義者の誰かだったかな。
映画の中で印象的なシーンがある。
とある高層集合住宅団地の模型が出てきて、その住棟を横倒しにすると、じつは敷地内に低層住宅団地として無理のないボリュームとしても納まることが端的に示されるのだ。
建物を高くする必要は実はなかった。高くする本当の理由は、もっと多くの人間を狭い敷地に詰め込むため、(そして不動産ディベロッパーが楽して儲けるため)なのだ。
やれやれ。
どっとはらい。