「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」
メディアには、権力を監視するという役割があって、それが民主主義の重要な支えであるのは疑いない。最近のメディアの質の変化は別として。
本作はそのことを改めて思い出させてくれる。
興味深いのは、いわゆる切れ者やスマートな人々は、権力からの圧力に案外無抵抗だということ。本作に登場する、ワシントンポストの取締役はその代表格だ。社主の女性の亡くなった夫君も、そうだったのだろうと思わせる。
そうした圧力の下で、目に見える「利益」や、自身も含めた関係者の「幸福」という言葉に惑わされずに、もっと深い部分にある「哲学」に従って判断を下せたのは、常に控えめであることを強いられてきた女性社主だった。彼女が、周囲の友達に気を遣ういわゆる和を尊ぶ人から、大きな間違いに目を瞑ることはできない人間に成長するところが、この作品の眼目だろう。
その判断は、一人彼女にとってだけでなく、我々全員にとって幸いなことだった。
いま同様のことがあったときに、どうだろうか。
そういうことを考えさせる点で、たいへんタイムリーな作品でした。
スピルバーグは、これを数か月で撮りあげて世に出したそうだが、さすがです。
脚本もすばらしい。公式サイトに詳しく載っています。