「ラッキー」
これはもう、ハリー・ディーン・スタントンを称える映画。それに決まってる。しぶいのう。「名脇役」の評価とおり、すごい数の出演作で脇役を務めた。アベンジャーズで警備員までやってる。気づきませんでしたわ。
主役といえば、もちろん「パリ・テキサス」。ええのお。
たぶん自分的通算ベスト10に入ると思う。いやベスト30くらいか。
本作で彼が演じる老齢の主人公は、死の近さを自覚してある悟りを得るわけなんだけど、その手掛かりというか切っ掛けになったのは、バーで知り合った退役海兵隊員が太平洋戦争従軍時に沖縄戦で遭遇した日本人少女の死を前にした不可解な笑顔の記憶。長いので息継ぎ注意。
その悟りに達する直前に、いきつけのバーで、オーナーのマダムに喫煙を咎められて口論になり、そこで、ふと、名セリフを口にする。
具体的にどう言ったかは覚えていないけれど、所有という観念を乗り越えたその先を指し示していた。他人に所有を放棄するのを迫るだけなら単なる我儘だが、自分の所有をも同時に否定し去るのは、悟りと呼ぶほかないだろう。そして、かの少女のように彼は微笑むわけだ。
いいなあこの表情は。
この主人公は等身大のわれわれと同じように、いろいろなルールに囚われているんだね。作中を通してずっと。
それが、終盤に来て、知り合いのパーティーでふと緩む。スペイン語で愛の歌なんか披露してしまう。そうしたら、場の人たちと一緒にとても和やかな空気につつまれるのだ。
それが、最後のあの表情に繋がっている。
そういう悟りを示して見せるのが、本作の脚本の狙いであり、
そういう顔をカメラの前でつくれるのが、この俳優さんの実力だ。
エンディング・テーマも、彼、スタントンを称えている。
長い間お疲れ様でした。
よい作品をありがとう。
ちょっと勢いで書き殴ったから、ポイントがずれてる気もするが、まあいいか。
良作であることは間違いないです。