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2018.04.22

「修道士は沈黙する」

あまり世間のウケは良くないようだけれど、見ごたえのある面白い作品。経済至上の実利主義に流れていく世界の中で、精神主義の抵抗と一場の勝利を、静謐だが雄弁な映像で描いている。

見逃さなくてよかった。

* * *

金融屋さんが見たら、きっと異論はいろいろあるのだろうけれど、修道士は彼らとは違う地平に生きている。そして我々はその両極端の間でいつも迷っている。

この映画は、そんな迷える我々に、明確に、修道士の考えが善だと訴えてくる。

重大な秘密を打ち明けられ、戒律によって沈黙を守る修道士に対して、俗世の頂点に立つ登場人物たちは入れ代わり立ち代わり、彼を翻意させようと説得に訪れる。金の力で屈服させようとし、讒言し、あるいは世の中のためと言って脅迫してくる。

修道士の方は全く動じず、むしろ短い言葉と信仰で、あるときはやんわりと、またあるときはきっぱりと、時には無言で、圧力を押し返していく。

そんな彼に、彼の信じる神はどう顕れるのか。
会議に現れた犬の行動が象徴的だ。何が起きるかは劇場でご覧あれ。

心を持たないなどと揶揄される金融業界のお偉方でも、やはり本能的な畏れは持っているらしい。そして必ずしも一枚岩でもない。この会議室の犬のシーンは、それをとても上手く表している。

あとは、この有能で独善的で傲慢な人々に、行動を改める言い訳を与えてやるだけだ。修道士が自殺した理事に見せられた数式がその恰好の言い訳になる。


全体を通して落ち着いた空気の良作でした。舞台に設定されたホテルの簡素で豊かな空間が、ある種の神域を想わせるのもよかった。

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