「大英博物館プレゼンツ 北斎」
大英博物館が開催した北斎の企画展に即して、北斎という画家と作品を描写した映画。企画展の裏話のような楽屋オチは一切なく、北斎という人間を、その膨大な作品を通して読み解こうとする試みに集中していて、とても好感が持てる。
実際のところ、よく知らなかった。すごい人なんだなということは漠然とわかっていたけれど、せいぜい富嶽三十六景がお茶漬けのカードになってたなくらいの理解しかない無学無教養なのだ。
それが、この映画を見ると、彼の画がどんな思想に基づいていたか、とか、90歳までの人生でどのような変転があって、それが画にどのような変化、というか進歩をもたらしたか、といったことに触れることができる。ありがたいですな。
彼とその作品群を絶賛する英国人が、映画の中にたくさん登場するのだが、彼らの視点は2つある。一つは、万物に魂が宿るというアニミズムに何かを感じる視点。もうひとつは、年齢を重ねるほどに技巧が熟達し限界を感じさせない精神の自由さを称揚する視点。この二つが同居している北斎の人柄に、英国人はいたく感動したようだ。
まあ、我々日本人としては、比較的普遍的なものだと思うのだが、彼らにとってはそうではないらしい。
それにしても、80歳を超えてからの肉筆画の迫力はすごい。NHKの8Kカメラを持ち込んで、肉眼ではわからない細かなところまで観察しているのだが、その筆致の精密さはおどろくばかり。
ひたすら圧倒されました。
こういうのを映画にしてくれるのって嬉しいです。