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2018.03.04

「空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎」

傾国の美女というとどんな悪女かと思いがちだけど、楊貴妃はどうも、頭も良くて芸達者で陽気な、誰にも好かれる思いやりのある、ちょっとふくよかな美人だったらしい。wikipediaざっと読んだだけだけど。

その楊貴妃が、玄宗皇帝の寵愛を受けるまでは良かったのだが、一族が過大に取り立てられて専横が激しくなったのが悲劇だった。安禄山の乱が起こり玄宗が都を落ちのびる中で、皇帝に付き従っていた兵士たちからも妃の殺害を要求され、側近に縊り殺された、とされている。

楊貴妃はいわば、一族討伐に巻き込まれた、可哀想な人なのだ。

映画のなかでは、教養ある美人であるだけでなく、思慮深さや気遣いで周囲を明るく温かい気持ちにさせる優れた人物として描かれている。
それだけに、その理不尽な死には無念さがつきまとう。

その無念を材料に、史実とは異なるトリックを仕込み、乱の数十年後に楊貴妃を描いた長恨歌の時代に視点を移して、謎解きに仕立てたのが本作だ。謎解きの探偵役は空海。

謎解きの手がかりとなる日記は、阿倍仲麻呂が書き遺したもの。空海では迫れない、皇帝と貴妃に近い視点を提供して、物語に厚みを付けている。なんて豪華な布陣なんでしょう。

物語の豪華さと同時に、映像の密度も高い。長安の都の様子はロケではなくセットだそうで、たいへんな時間と労力が注ぎ込まれている。これの出来が良くて本物感抜群です。

楊貴妃の死後、伏線が回収されていく部分は、少し長い気もするけれど、悪くない一本でした。

映画の出来とは関係ないけれど、公式サイトのインタビューはもう少しちゃんとまじめに作ってほしい。尻切れトンボになっていたり、コピペが繰り返されていたりで、手抜きが目立ちます。読む人も少ないけどちゃんといるのですよ。

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