« January 2018 | Main | March 2018 »

February 2018

2018.02.10

「ライオンは今夜死ぬ」

流して見ると、何がなんだかよくわからないが、少し立ち止まって考えると、なるほどと頷けるところがある。

彼女はたぶん彼を、日本民話風に言うと、とり殺しに来たんだろう。
とり殺すと言うとちょっとおどろおどろしいが、そこはまあ南仏だし、そうさな・・あの世へいざないに来た、とでも言っておこうか。あなたもう歳なんだし、そろそろいいんじゃない? みたいな。

これはね、生きる希望を失いかけている男には効きますよきっと。
実際、蝋燭の光と闇がまざった部屋のシーンなんか、鬼気迫るものがあるし。

という具合に下地をつくっておいて、さて、それとはまるで別の世界の住人たる子供たちが、対置されているわけです。天真爛漫、屈託がない、光り輝く、さんざめき、そういう言葉そのものが踊り跳ねているかのような子供たちが。

この陰陽の対比はとてもいい具合ですよ。

彼は子供たちのおかげで、もうちょっとこの世にいようかなと思うわけだ。
そんなことは一言も口にしない代わりに、ライオンの歌を歌って心情を吐露するのです。

彼女はそれを悟って湖へと消えていく。「じゃね」という軽い口調で、まあ、いずれはこっちへ来るんだし、もうちょっと待ってもいいわ、みたいな。でもちょっと惜しかったな、もうちょっとだったのに、てへぺろ、みたいな。

君が若くして亡くなったのは本当に残念だ。でもそれは人の運命というものであって、僕にはどうしようもないことなのだ。君を追ってあの世へいくことなんて出来はしない。
そんなことは一言も口にしない代わりに、彼は海の歌を歌うのです。

彼女に取り込まれれば、それはそれで湿っぽいいい話だし、
まあ、また今度にするよとなれば、それはそれで、からっとしたいい話。

ライオンはどこにでもいるということも、子供の中の一人を通して触れられていて、少し襞もあった。

南仏という光のイメージにとても似合う素敵なお話でした。

|

2018.02.03

「羊の木」

いがらしみきおと山上たつひこによる原作漫画があるそうな。だからなのかどうか、設定、展開、オチ、全てが漫画的なものを感じさせる。

普通の映画というものとどこが違うかというと、層の積み重ねがなく、取っ散らかっている印象がある。朝のテレビドラマや週刊連載の漫画のようなというか。大きな流れというものがない。まあ、それはいい悪いではなくて、そういう表現形式だということなのだろうけれど。

お話はよくも悪くもない。刑務所で服役中の人が一体何人いるのかしらないけれど、それが過疎の解消に役立つボリュームとも思えないが、まあ、漫画だしということでいいんだろう。

たぶん、この映画に価値があるとすれば、犯罪者という区分に入ってしまった人にも、いろいろいるということをじっくり描いている点だろうか。羊の木の絵柄の蓋だか皿だかに、羊が5匹しか描かれていないのは、登場する元犯罪者6名のうち、5名くらいはまあ更生できるけれど、1人くらいは救えないケースもあると言いたげだ。

まあ、仕方がないよね。環境が激変したら、ひょっとするとその1人が次の人類の始祖になるかもしれないのだし。

てなことを、映画とは関係なく思いました。
幸いというべきか、サイコパスとも服役囚ともこれまで縁がなかったので、感想も表面的になります。

|

2018.02.01

「スリー・ビルボード」

これはいい映画。滋味がある。
娯楽映画ではありませんので誤解なきよう。

取り返しのつかない後悔とか、やり場のない怒りとか、そういう心に刺さったままの棘と、どう付き合っていったらいいのか。
そういうことをつらつら考えながら見る作品。

激さない。けれども折れない。それほど怒りは深い。
世俗の神とその手先など最初から敵に決まっている。
周りはすべて敵かと思うと、意外な味方がいたりする。

反省する? 悔い改める? まあそれはひとつの方法だけれど、それでも間違いを繰り返すのが、凡庸な我々の定め。

それでも最後は、時間を味方につけて、少しづつゆっくり、「道すがら考える」で終わっているのが、とてもよい。

癒えない傷を持つすべての大人に、赦しと救いを教える映画。

|

« January 2018 | Main | March 2018 »